数学が苦手な理由

公開日 2022/05/25

数学という科目は最も個人差の出やすい科目です。
ある人は教科書を読むだけで章末の問題が解ければ、
ある人は何度説明を受けてもちょっと問題文が変わるとわからなくなります。
なぜそのようなことがあるのか。
要因は一つではありませんが、大きなものを説明します。

「同じ」とみなす

「同じ」というのは人によって認識に差があります。
例えばこれ。

この二匹のイルカは、「個体」という目線では「違う」個体です。
背びれの形や模様なども違います。
人もそうですね。
しかし目線を上げて「種」として見ると、
バンドウイルカという「同じ」種になります。
さらに
イルカもヒトも、哺乳類という点では「同じ」になります。
これを図にすると下のようになります。

または下のようにも書けます。

このように、どのレベルの目線で見るかによって「同じ」か「違う」かは異なります。
大きな括り(上の図では外側、下の図では上の方)は抽象化を意味します。
ヒトやイルカなどが乳で子を育てるという共通点を抽出し、哺乳類と名づけています。
このように共通点を見出す抽象化が、学習する上で非常に重要な要素になります。

なぜ重要かをもう少し詳しく書きましょう。

高校数学で習う公式の一部を挙げます。

$$y=m(x-a)+b$$

$$y=a(x-p)^2 +q$$

$$(x-a)^2 + (y-b)^2 = r^2$$

数学が得意な人はこれらを「同じ」とみなします。
逆に苦手な人はこれらは関係のない「違う」ものとして捉えます。
この3つの公式の共通点は、平行移動です。
どれも次の説明で片付きます。
すなわち、関数f(x,y)=0 をx軸方向にp、y軸方向にq平行移動すると f(x-p,y-q)=0 となる。
以上です。
解説は書きません。
これが抽象化の例です。
とにかく今伝えたいのは、この1文が分かれば3つの公式を一つ一つ違うものとして捉える必要がなく、大して覚えることがない、ということです。
逆に言うと、
これを理解しないままでいるとそれこそ公式の「丸暗記」に終わり、覚えることが多いと感じ、すぐに忘れてしまうのです。

つまり、数学がいつまでたっても理解できない人はこの抽象化を行っていません。
中学数学からのつながりに気づいていない人も多いと思います。
高校数学には2次関数、三角関数、指数関数などありますが、すべては中学の比例・反比例や1次関数からつながっています。言うなれば、中学からずっと同じことを繰り返しているのです。

抽象化はヒトにしかできない

この抽象化というのは高度な技です。
$$x = 3$$
と書いてxと3は等しい、と言っても、
「xはxであって3とは等しいはずがない」のが普通の感覚です。
動物にはこれが理解できませんし(たぶん)、理解できないヒトがいるのも当然のことです。
ゆえにあまりに理解できない場合は数学から離れて他の得意なことを見つけるのも大事です。

その教材の使い方あってる?

公開日 2022/05/18

学生の皆さんは毎日何かしらの教材を使っていますが、
それがどのような目的の教材なのかを理解しているでしょうか。
次のような質問に答えられるでしょうか。

✅その教材から得られるものは何か。
✅どのような難易度の教材なのか。
✅その教材を使う時期は?

これらを把握せずに使い続けると、
効果は半減、いやそれ以下でしょう。
その時間がもったいないです。
今日は教材の種類とその使用法についての解説です。

3種類

教材は大きく分けて以下の3種類存在します。

①解説書
②演習書
③過去問

それぞれについて解説します。

①解説書

つまり教科書のようなものです。
例えば、

このような公式事典や文法書、教科書の内容をより噛み砕いて説明されるものです。
使用目的は、ずばりインプットです。
・全体像の把握
・学習内容の理解を深める
・問題集の解説では不十分なところを補う
というふうに使います。

特徴としては、市販のものは教科書よりもわかりやすい編集であったり、口語調で書かれていたりするので読む人によっては教科書より使いやすい点があります。
また、入試を意識したより深い内容まで解説されるものもあります。

②演習書

言い換えると問題集です。

使用目的はずばり、アウトプットです。
解説書で学んだことを実際に使ってみるということです。
・学んだことの理解度チェック
・知識の活用の仕方を学ぶ
・多くの問題に触れて、慣れておく
といった使い方をします。

特徴は、問題量が豊富であることと、解説は簡素なものが多いです。

③過去問

入試や資格試験の過去問です。

使用目的は、過去問の研究・演習です。
・どのような難易度の問題が出題されるのかを知る
・傾向を知る
・問題形式に慣れる
などの目的で使います。

特徴は演習書に似ており、解説は簡素です。
3〜15年分、中には50年分の問題が掲載されているものもあります。

NG行動

それぞれの特徴、使用目的がわかったことで、
するべきでない使い方も見えてきます。
学生が陥りがちなNG行動の例を挙げます。

レベルの合わない教材を使う

受験生にありがちです。
自分の習熟度に合ったものを使わないと非常に勉強効率が悪いです。
例えば、
ほぼ全て知らない単語が載っている単語帳で単語を覚えようとする。
受験勉強開始時にいきなり過去問演習をし始める。
など。
目安として、半分くらいはすでにわかるものを使った方が良いです。
演習書で自分のレベルを把握しましょう。
自分ではわかっているつもりでも、実はそうではないことは多々あります。

演習書ばかり使う

問題を解くばかりの人、いないでしょうか。
たくさん解くことは大事です。
しかし、そればかりでは考える力は伸びません。
特にこれは、抽象的な思考が重要な数学で差がつきます。
解説をしっかり読み込んでいるでしょうか。
また、演習書の解説では不十分な点を解説書で補っているでしょうか。
問題集だけでは、どうしても断片的な解説にとどまります。
ですから深い学習ができておらず、いわゆる応用問題に手も足も出なくなります。
問題集で解いた問題そのままの問題しか解けない、ということです。
学校で配られる教材は、ある理由で解説が雑なものが多く、つまり学校の先生の授業での解説を前提として作られているので独学には向きません。


道具には使い道がある

世の中の道具にはたいてい、「使い道」があります。
何か目的があって、それに達する手段です。
想定されたもの以外の使い道をすることもできますが、受験の世界では不要です。
目の前に定規があるのに、わざわざノートを使って直線を引きませんね。
目的をはっきりさせ、それに適う道具を使うことが大事です。
決まったことを決まったようにやらないといけないのに、
「思考力」を育てようとする矛盾も起こっているわけですが。

抑えると、反発する

公開日 2022/05/11

作用・反作用の法則

今あなたはスマホの画面を触っている、もしくはパソコンのキーボードやマウスを触っていると思います。
「触れている」感覚があると思います。
なぜかというと、
あなたが指で画面を押していて、同時に画面から押されているからです。
壁ドンをすると手が痛いですが、
なぜかというと壁もまたあなたを叩いているからです。

このように、
物体に力を加えると、反対向きで同じ大きさの力を受けることを
作用・反作用の法則といいます。

上の図で矢印は力の向きと大きさを表しています。
同じ色の矢印は、それぞれ作用・反作用の関係にある力を示しています。

青:人が壁を押す力、壁が人を押す力
緑:人が地球に引かれる力、地球が人に引かれる力(万有引力)
黄:人が床を押す力、床が人を押す力
赤:摩擦力

壁ドンするときにはしっかり足を踏ん張りましょう。(赤の力)
そうしなければ、自分が壁を押した瞬間、壁から押されて後ろに退いてしまいます。
くれぐれも氷の上で壁ドンをしないように注意しましょう。

我々はこのように、
押すと同じ力で押し返されるという法則の下で生活しています。

どこにでもある

作用・反作用の法則というのは、
物理的なものに限らず、様々な事物に当てはまるのではないでしょうか。
例えば、
やるな、と言われたらしたくなりますよね。
あの場所には行くなと言われたら
何があるのだろう、と興味を持って行きたくなりますよね。
行くなというくらいだから、面白いものか何かあるに違いないと。

部屋の片付けをしなさい。
宿題をしなさい。
家事を手伝いなさい。
と言われるとやる気が失せますね。
反作用がはたらいているのです。
仕事を始めると、国や自治体から
税金払いなさい、と言われます。
ええっ、こんなに払いたくないです。
これも反作用ってことです。
(私はきちんと払っています。)

精神的作用・反作用の法則、と言えるかもしれません。
抑えようとすれば反発する。
自然界では当然起こりうる事象です。

GWは遊べ(?)

公開日 2022/05/04

皆様いかがお過ごしでしょうか。
私は特に変わり映えなく日常を過ごしています。
街には人出が増え、ようやく活気が戻ってきたという印象です。
5月5日はこどもの日です。
昨年も同じことを書いた気がしますが、やっぱり鯉のぼりを見ることが少なくなりました。
このまま姿を消してしまうのも時間の問題かと思うとやや寂しい気持ちです。
柏餅でも買って食べましょうかね。

高校生は休み明けに今年度最初の定期テストがありますね。
中学校もあるところはあるようです。
塾講師の立場としては
学校が休みだからたくさん準備できますね!
と言いたいところではあるのですが、
中高生としては
なんで休み明けがテストなの?
と思うのではないでしょうか。
私がそうでしたからね。
どうせならGW前にテストしてくれたら良いのに。
そうすればテストのことなんか気にせず遊べるのに。
大人だってそうだと思います。
休日前に仕事で何か問題が発生したらそれを解決せぬまま休みに入るのはいやですよね。
ずっとモヤモヤした感じです。
心が休まりません。
GW直後にテストをするというのは
何か生徒を学校に縛り付けようとしてるように見えます。
「勉強する時間を確保してやったぞ」みたいな。
いや、そうではないとは思いますが、
もう少し配慮してもよいのではと思いますね。

遊んだ方が頭が良くなる(?)

私は塾講師ですが、あえて言いますと
GWはたくさん遊んで良いと思います。
机にかじり付いて勉強ばかりしているとむしろ頭や体、心にも悪いと思います。
自然の中に遊びに行ってはいかがでしょうか。
例えば虫取りとか。
虫取りはとても頭と体を使う遊びです。
木の幹や葉っぱをよーく観察しないと虫は見つかりません。
腐葉土や樹液が発酵したにおいを頼りに探します。
舗装なんてされていない、草や木が生い茂った道なき道を上手にバランスをとりながら進まないといけません。
自分がどの方向に、どのくらいの距離を進んできたのかがわからないと迷子になります。
つまり
集中力、嗅覚、バランス感覚、空間認識力などが養われます。
空間認識力とは、自分と対象との距離感をつかんだり、立体的なものの形状をつかんだりする力です。
地図を読んだり、学校の勉強では図形問題に取り組む時などに必要になります。
紙面上で、またはスマホやタブレットで見て考えて身につくような力ではありません。
ずっと画面を見ていては衰えるでしょう。
人間本来の感覚が失われていく、ということです。

遊んでいるときは、皆さんが思っている以上に
「勉強」しています。
だから私は、GWくらい外で遊びまわることは止めようと思いません。