先輩の話の鵜呑みは危険

公開日 2022/07/23

いつも通り水曜日にブログをアップしようとしていたのですが、海外からサーバーへのアクセスを制限され遅れてしまいました。楽しみに読んでくださっている方には申し訳ございません。
以下、記事本文です。

受験本番と言われる夏がやってきました。
難関を目指している生徒は言われるまでもなくすでに本番モードではあると思いますが、この期間はいつもよりも自分に必要な勉強をする時間が取れるので必ず「具体的な」目標を立てて実行しましょう。

合格体験記

同じ学校の先輩の合格体験記を読むことがあると思います。
あるいは実際に話を聞くことがあるでしょう。
いろいろな助言をもらいます。
例えば、
〇〇という参考書を3回やったら合格した、とか
△△の単元は1週間集中してやれば終わる、とか
夜にせずに朝勉強したほうが良い、とか。

模試の判定が返ってきて結果が芳しくないと、焦って方法を変えたり他人の真似をしようとしてしまうことがあります。
そういうのをそのまま鵜呑みにするのはよくありません。
このような助言の正しい認識の仕方を知っておきましょう。

前提が全く違うことを知る

そもそも、全く同じ人間はいません。
それまで育ってきた環境などが違うので当然です。
つまり、それは学習面についても言えます。
例えば、
ある問題集を3回やったとして、全く同じ成果が出ることはまずありません。
その方法で成功した先輩は、学校の授業を受けた時点でかなり理解度が高かったのかもしれません。
練習して計算スピードを上げてから取り掛かったかもしれません。
いずれにせよ、その問題集をやる以前に積み上げてきたものが違えば、それにより学習効果は大きく変わります。
現時点での習熟度や本人の理解速度、目指すレベル等々を考慮した上で何を勉強すべきかは決まってくるのです。

サンプル数が小さい

前提が違うからといって、特別その勉強が悪いわけではありません。
ただこれをサンプル数の観点から見てみると参考にはできません。
どういうことかというと、
例えばあるクラスで
A君は国語の点数が50点で数学の点数が80点でした。
対してB君は国語の点数が90点で数学の点数が40点でした。
だから、「国語の点数が低い生徒ほど数学の点数が高い」と言えるでしょうか。
そうはなりませんよね。
少なくとも、そのクラス全員の結果を反映させねばなりません。

A君とB君以外は国語が高いほど数学も高いかもしれませんからね。

つまり、ある人の勉強法が自分にとっても良いかどうかをそれだけで判断するのは誤りであるということです。
サンプル数n=1の情報です。
だから、もし参考にするのであればサンプル数の多い、
すなわち多くの人が実践した結果効果の出ることが比較的多かったものを採用するほうが良いということです。

それでは勝てない!

次に書くことは、向上心がある、成長意欲のある人向けです。
サンプル数の多い成功事例は確かに効果の出ることが多いです。
しかし、それを実行しただけで他人を上回ることはありません。
同じことを実行した人とは差が少ないですし、その方法を生み出した人には決して勝てません。
なぜなら、その人はその方法にたどり着くまでに様々に試行錯誤したからです。
その方法をそのまま真似て実行した人とは経験量が桁違いである、ということです。



模試のやり直し

公開日 2022/07/13

定期テストや模試が終わりましたが、生徒の皆さんはもう復習は済んだでしょうか。
テスト訂正ノートが宿題になっていることも多いと思いますが、今回はテストの復習の時にやるべきだけどほとんどの人がやらないことを書いていきます。

ほとんどの人がやること

・もう一度問題を解く
・解答のポイント、なぜそうなるかを調べて書く

この二つは多くの人が行うと思います。
たまに上しかしていない人もいますが。
生徒の訂正ノートを読むと、大体は問題用紙と自分の解答用紙を貼り、テストの時に解けなかった問題を解き、ポイントをちょっと書き込んで終わりです。
解答の核まで書けていれば一応の及第点ではあります。
しかし、これから書くことを実行すればテストのやり直しをより効果的にし、周囲に差をつけられます。
大学受験を目指すのであれば、それは競争ですのでぜひやっていただきたいです。
特に模試の時には実行してください。
2点挙げますが重要な点は
先につながるやり直し
です。

①類題を解け

定期テストレベルだと、「ほぼ完全に見たことある問題」が多いです。
数学ならば教科書の章末問題、
国語や英語ならば教科書の文章
がそのまま出題されますね。
しかし模試は違います。
全く同じ問題はありません。
(見かけは)初めての問題です。
読んだことのある文章が出てくるわけではありませんよね。
つまり、国語や英語では初見の文章を読んで理解できますか?と問われます。
数学では教科書でやったことを理解した上で、それを応用できますか?ということです。

となると、その模試の問題だけをやり直したところで、
次に活かせるでしょうか?
出題された文章はそのまま入試に出ますか。
見た目が全く同じ数学の問題が出ますか。
違います。
もう二度と同じ問題は出ません。
だからやるべきことがあります。

国語や英語の文章ならば、その文章の内容を理解することは当然として、
・どのような思考過程でその解答に至るのか
・どのような点に注意して読めば論点を理解できるのか
など、似たような他の文章を読む時にも通づるような復習をしましょう。
数学ならば、
・問題の核を捉え、関連する問題を参考書等で解く
ことが有効でしょう。
模試の問題の復習だけだと、その問題にしか対応できない可能性が高いです。

②2回目のやり直し

1回目のやり直しは多くの生徒がします。
では2回目は?
全体の5%もいないのではないでしょうか。
チャンスです。
予言します。
今の高3で、この7月の模試を来年2月時点で80%以上解ける人は高3の10%もいないでしょう。
当たらなかったら大阪屋の焼肉を奢るので許してください。
それだけ、1度やったことを間違いなく再現できるように勉強している人は少数だということです。
逆に言えばそれができれば成績は上がりますし志望校合格は叶います。
だからチャンスです。
1週間後か2週間後か、1ヶ月後でも良いので2回目の解き直しをしてみましょう。



7/18~31について

塾長が休暇を取るため、代わりの講師として田中優一先生に指導していただきます。

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田中優一
1991年生まれ
御館山小→明峰中→諫早高→九州大 理学部→九州大学大学院理学府博士前期課程修了
趣味:音楽鑑賞、ボードゲーム観戦、天体観測など
特技:プログラミング
一言:生徒の皆様の一歩一歩のサポートに尽力させていただきます。よろしくお願い致します。塾長の弟です。
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この期間中、特に日程に変更はございません。
平常通り授業を行います。

連絡先に関して
こちらも平常通り、基本的には公式LINEの方へご連絡ください。

海馬、使ってる?

公開日 2022/07/06

7月に入りました。
高3生は部活を引退した生徒がほとんどで、自習時間は週30時間を超える生徒が増えました。
長期戦になるので規則正しく過ごし、学習を習慣化しましょう。
今日は脳の話です。

海馬とは

学習において重要な役割を果たす脳の部位です。
記憶力に関わっており、新しい情報を整理整頓する機能を持ちます。
記憶は数秒から数十分、数時間とどめておく短期記憶とそれより長い間おぼえておく長期記憶がありますが、海馬は特に短期記憶に関係しています。おぼえたことが海馬で仕分けされ、重要だと判断したものを大脳新皮質という部位へ送り長期記憶化します。

海馬を使う機会が減る?

記憶力が弱い(または弱いと思い込んでいる)人は、もしかするとこの海馬を使う機会が少ないのかもしれません。
海馬は脳の中で唯一鍛えることができる部位だと言われています。
日頃おぼえることが苦手だと思っている人は習慣的に覚えるということをしていない、というのが私の仮説です。些細なことの積み重ねは大きな変化をもたらします。

普段の生活で、短期的に「覚えよう」とすることがどれくらいあるか。
スマホやパソコンなどデジタル端末の普及で覚える必要がかなりなくなりました。
例えば、
電話をするためには相手方の電話番号を覚えておくか、電話帳で調べてそれを一時的に記憶し番号を打っていました。今はスマホの電話帳やウェブの電話番号を押すだけで簡単にかけられます。
カーナビがあるので、事前に地図を読んで国道〇〇号線とか、どこどこの角を左に曲がるとか覚える必要もありません。指示に従えば(ときどき変なところへ連れて行かれますが)いつの間にか目的地へ着くことでしょう。
知りたいことはいつでもどこでもすぐに検索して調べることができるので、積極的に覚えようとしない限り覚えることはないでしょう。

特に最近小中高生について気がかりなのは、プリントで授業されることが非常に増えたことです。
プリントで学習するメリットはあります。
もともとは板書を写すのに使った時間を考えたり問題を解いたりするのに使えます。
しかし、高校生はまだしも、小中学生にはデメリットの方が大きい気がします。
細かく見ると板書を書き写す時というのはすごく頭を使います。
先生が黒板に書いたことを、パッと見て(短期的に)覚えて、自分のノートに書き写します。
一時的に覚える量が多いほど黒板を見る回数が少なくて済み、書き終わるのも早くなります。
書き写す時は、黒板とノートでは大きさが違うので、その比を考えて文字の大きさや改行する場所などを決めねばなりません。きれいに書くためにバランスを考えます。
文字を書く動作もそうです。
プリントがなければ9年間でものすごい量をこなしますね。
これだけでも相当海馬は鍛えられると思います。

鍛える方法

前述のように、海馬は鍛えることができます。
生活の中で鍛える方法を紹介します。

①運動する
1日30分ほどの有酸素運動(息が上がらない運動)は効果的なようです。
朝夕の通勤通学でも十分取ることができますね。
特に朝日を浴びることがセロトニン分泌を促しストレスにも効果があるので、事情がない限り車で学校まで送ってもらうことはすすめません。歩きましょう。

②ちょっとしたことを覚えようとする
記憶が苦手な人は、そもそも覚えようとしていないと思います。
海馬は覚えようとしないと覚えてくれません。
例えば、電話番号やメールアドレス、アカウント名を入力する際にコピペしないで覚えて入力するなど。
板書と同じでとにかく少しの間記憶しておく、という動作を繰り返すことが大事です。

③よく眠る
睡眠が重要であることはもうかなり知られてきました。
これについては過去にがんばって書いたので読んでください↓
寝る子は育つ①
寝る子は育つ②
寝る子は育つ③

④冒険する
今はいろんな場所へ入るとすぐ怒られるようになってしまいましたが、新しい場所を探検することは非常に脳が鍛えられます。興味深いことにこれはゲームでも良いようで、3次元の世界を冒険するようなゲームは特に効果的です。マインクラフト面白いですよね。

ちなみにこれは大人になっても鍛えられます。
認知症予防にもなるので軽いトレーニングを日頃から行うと良いでしょう。

選挙を機会に

公開日 2022/06/29

もうすぐ参議院議員選挙です。
生徒から聞きましたが、選挙権のある高校3年生(誕生日が7月11日までの人)は学校でも期日前投票ができるらしいです。調べたら昨年の衆院選でも実施してたのですね。高校生にも是非投票してほしいと思います。
どこに、誰に投票するか決められないという人は、面白いものを見つけたので以下のリンクを参照してみてください。

早稲田大学マニフェスト研究所

各政党の公約を比較することができます。
どういったテーマが議論されているかがすぐにわかると思います。
近年は情報収集が選択的になりやすく、幅広い分野を知るためには能動的に行動する必要があります。政治・経済という面から世界を見て、将来の自分を考えるきっかけになり得ると思うのでよく読んでみると良いでしょう。
私も読みましたが、目先の問題も大事ですが、100年スパンで日本をどういう国にしていくのか、具体的な数字とともに書いてほしいなと思いました。

きっかけが少ない

将来どういうふうになりたいか決めるとまでなくとも、候補や興味のあることを生徒によく訊くのですが、ほとんど返事がない(内容がない)人がまあまあいます。
無理もないと思います。
小学校から中学校までの9年間、狭い学校の中で朝から夕方まで同じメンバーで同じ事をやっているわけですからね。高校は実業系もありますが、70%超は普通科です。
なんとなく、このまま他の皆んなと同じようになるんだろう、という感覚があるのは当然と言えます。
(それ自体が悪いわけではありませんが)
中学では職場体験があるとしてもたった3日間、総合の時間などで将来のことを考える機会はないことはないですが、非常に少ないです。
そもそも知っている事が少ない中で、将来どうするか?と訊かれても困るのは不思議ではないですね。
私も中学生のときに知っていた職業といえば、身近な先生や医師看護師、公務員、農家、お店にいる人、工場でものづくりしている人、そのくらいの認識だったと思います。他にも知っていたことはありますが、具体的なイメージとは程遠いですね。

これは就活生でも同じではないでしょうか。
インターンなどもあるわけですが、学生生活のどこかを削って時間を作っています。青田買いもよく問題になりますね。とにかく選択するための時間が少ない。十分知るための時間がなく卒業、就職という学生は少なくないと推測します。


つまり、このような制度が変わらない限りは、
自分達から動かねばならないということです。
自分の意思を以て動いている人は非常に生き生きとしています。
学校に行くのがもったいないくらいです。
あれやれこれやれと指示しなくともいつの間にかやっています。
そうなるようなきっかけを作るのが大人の責務であり、私の責務であると勝手に思っています。
そして学生は、ほんの少しでも興味を持ったものから調べて行動してみることをすすめます。
または、本当に興味のあるものがないというのであれば、
目の前にある勉強を一所懸命に取り組んでください。
そうすれば自ずから、興味が生まれてくるものです。

それは本当に効率が良いのか

公開日 2022/06/22

昨今は効率というものが神格化されてきているような気がします。
かく言う私も、何事もいかに早く、上手に事を済ませるかは常に考えていますが、
一見「効率が良さそう」でも実際にはそうでないこともあります。
これを学習の観点から見てみたいと思います。

早く単語を覚えられるか

例えば英単語を早く覚えられる方法はあります。
基本的には思い出す回数を増やしたり、寝る前に勉強したりすればある程度効率よく覚えられます。そういった情報はすでに巷に溢れているので今回は書きません。
実行すれば確かに覚えられるのですが、この実行する側にある視点がしばしば抜け落ちており、それが長期記憶化です。
つまり、学校の単語テストなどの急場凌ぎにはなるのですが、受験対策として、さらには一生物の教養として身につけるには至らないのです。
ではどうするかというと、単語の場合は単語帳で勉強が終わってはいけません。
文章の中で何度も出会ったり、実際に経験してみてそれが少しずつ自分のものになっていきます。
例えば、
biomimetics (バイオミメティクス、生物模倣)という単語がありますが、オナモミからマジックテープ、カワセミから新幹線が生まれたことを知り、それを実際に見てみたり、より詳しく調べてみる、という過程を経ると忘れることの方が難しくなります。

問題の解法を忘れてしまう理由

数学をいくら勉強しても伸びない人は、目の前の問題を解くことだけに集中しています。
例えばテスト前に範囲指定してある問題をひたすら解いていくと思います。
確かに、高校までの定期テストや中学ではそれが通用します。
ほとんど見たことがある問題しか出題されないからです。
要するに上で書いた単語テストの勉強に似ているわけです。
完全にはわかっていなくても、とりあえず答えの出せる手続きを覚えていけばテストでは解答できるので、本人はその勉強したことがわかったつもりになっています。
1、2回解けばできるので、一応「効率」は良いのです。

しかし、これも単語と同じようにすぐ忘れてしまいます。
ではどのような勉強をすべきかというと、基本を理解することです。
わかりやすくするため例題を出します。

$$4^x – 5 \cdot 2^{x+1} – 24 = 0$$

この方程式を解くときに最初苦戦する人が多いのが、指数の処理です。
\(4^x \) を \((2^2)^x = (2^x)^2 \) と変換したり、\(2^{x+1} \)を\(2 \cdot 2^x \) と変換する必要があります。
このとき、この処理をそのまま覚えようとしていてはすぐに忘れてしまうか、または応用が効きません。
\((2^2)^x = (2^x)^2 \) という変形ができるのをしっかり理解するべきです。
例えば、\((2^3)^4=(2^4)^3\) と変形できることを試してみたり、\(\)
そもそも\(2^3=2\cdot2\cdot2\)であるから、
\((2^3)^4=(2^3)\cdot(2^3)\cdot(2^3)\cdot(2^3)=2^{12}\) と計算でき、さらにそれを一般化して
\((a^m)^n=a^{mn}\) が得られます。
指数法則を理解するわけです。

この一見「効率の悪そう」な勉強は、定期テストが終わった後も威力を発揮します。基本を丁寧に勉強しているので、すぐに忘れるようなことはありません。とりあえず問題を解くよりもむしろずっと効率が良いのです。

時間をかけてじっくりと

このような視点が蔑ろにされていないかが私の懸念するところです。
何でもスピード重視、効率重視で進めた結果、皮肉にもその逆の結果が生まれてしまいます。
手間暇をかけてじっくりと育てれば、その果実は大きく実り、土もまた次の世代を育む力を持ちます。手間を惜しむと、その果実は大きいかもしれませんが次の世代は育たないでしょう。
効率よく覚えたものは、効率よく忘れてしまうのです。

爆破予告と想像力

公開日 2022/06/15

先週の金曜日、中学生が授業に遅れてきたので理由を尋ねると、
そこで初めて知りました。

6/3(金)に諫早市役所と市内の14の中学校への爆破予告のメールが市役所へ届いたようです。
その爆破予告の示す日は6/10(金)で、警察などが調べたようですが結局何事もないようです。

誰がやったのかはわかりませんが非常に迷惑な話ですよね。
犯人の動機もわかりませんが、このような事件を耳にするたびに、
想像力が足りなさすぎると思います。

どのくらい迷惑をかけるか

簡単に計算してみましょう。

直接的にも間接的にも迷惑を被った人がいますが、際側がなくなるので限定して、
・市役所職員
・中学校関係者(生徒・職員)
とします。

およその数は
市役所職員は700人、
中学校生徒は3400人、
中学校教職員は300人です。
計4400人
関わった警察関係者は、これは私にはなかなかわかりませんが100人としておきます。
合計4500人。

少なくともこれだけの人の日常生活を乱したわけです。

市役所から警察、学校へ連絡が行き、保護者へ知らせ、
学校では生徒全員が持ち物検査をされ、
警察は市役所や学校に不審物がないか校舎中を見て回る必要があります。

少なく見積もっても、
一人当たり2時間の損失ではないでしょうか。
とすれば、
2時間×4500人で9000時間の損失です。
長崎県の最低時給821円で計算しても、約740万円の損失です。
この9000時間の価値がそれ以上なのは言うまでもありません。

想像力の欠如

近年、このような犯行予告が増えているようです。
諫早では2020年にもありましたね。
背景として、やはりインターネットの存在があると思います。

そもそも想像力とは、
例えば言葉や音の情報を視覚化する、
相手の立場で物事を考える、
自分がした行動の結果を推測する、
といった力です。

この力が、情報化によって弱くなってしまうのではないかという仮説です。
紙の本とインターネット上の情報の違いがわかりやすいのではないでしょうか。
この両者の大きな違いは、情報量です。

見ない人が少数派であろうYouTubeをはじめとする動画サイト。
最近は10分の動画でも長いと感じる人もいるようですね。
TikTokで数秒から数分の動画を延々と見続けてしまう人も多いと思います。
つまり、映像という情報量の多いものを次々と見ているということです。
そこでは、なだれ込んで来る情報を処理しようとするのが精一杯で(そもそも処理しきれない)、情報量が多いため自分で補完する必要がなく受動的になっています。
私のブログのように文章ばかりの記事は読む人が少ないでしょう。
ありがとうございます。

一方で、紙の本から情報を得ようとする場合。
そこにあるのは文章のみ。
情報量が非常に少ないので、理解するためにはそこに書いてある言葉を視覚化したり、自分とは違う目線で考えたりと、想像力を必要とします。
紙の本がよくて、電子書籍は悪い、などと単純なことを書いているわけではありません。
どちらにもメリットがありますし私は使い分けています。

要するに、
想像力をはたらかせる機会が減っているということです。
特に2020年、コロナが流行り出した年に教育機関への爆破予告が急増したようですが(ソース:爆破予告の急増について)、外に出ることもできず、情報端末利用時間が長くなったであろうことととそれとは無関係には思えません。
今回の事件は、改めて我々の情報の扱い方を考える機会になるのではないでしょうか。
(想像しすぎでしょうか。)

想像力は学習にも社会で生きていくためにも、平和に暮らしていくためにも必要な力です。
少しばかり、未来が心配なわけです。

模試結果票の見方

公開日 2022/06/08

高総体お疲れ様でした。
塾生から様子や感想を聞きましたが、
まさに青春って感じですね。
多くの高3は引退していよいよ受験一本となります。
切り替えていきましょう。
部活で培った体力と精神力は受験勉強でも役に立ちます。

今回は受験生の基本の一つ、
模試の結果の見方を解説します。

意外と知らない

模試の結果票とはこのようなものです↓

これはベネッセの共通テスト模試です。
他にも駿台や河合塾などの模試や記述式模試を受験しますが今回はこれを例に説明します。

①成績

ここには得点(素点)、平均点、偏差値などがあります。

青い四角で囲ったところに
「5−8文系」とか「国数英文系」と書かれていますが何かわかるでしょうか。
5−8文系は、
5教科8科目、つまり国・数2・英・社2・理2での集計です。
(理系なら5教科7科目)
国数英文系は3教科ですね。
5−8の方は主に国公立大学志望者用です。
国公立大学は共通テストで全科目を課すところが多いのでこれを一つの参考数値にします。

3教科の方は主に私立大学志望者向けです。
私立大学は1〜3教科で受験できるところがほとんどだからです。

偏差値は、
その目的は異なる教科間で自分の位置を測るためのものですが今回は説明を省きます。
こちらの記事をご覧ください。
偏差値の見方
偏差値とは

②成績推移

ここでは過去の同じベネッセの模試結果の推移をみることができます。
左がマーク模試(共通テスト模試)
右が記述模試です。
上の表は得点と偏差値の推移で、下がその得点または偏差値をグラフに表したものです。

これからわかるのは、第一志望校の
前年の合格者との比較です。
折れ線グラフは自分の得点推移と前年合格者の平均点の推移です。
一目で自分がどの程度成績を上げるべきかがわかります。
グレーの帯は前年合格者の学力層です。
つまり、この中に入れるようにしよう、ということです。

③合格可能性

志望校ごとに集計した成績です。
ご存じA〜E判定や志望者内順位、分布を見ることができます。
ライバルがどのような成績を取っているのかがわかるということです。
黒い四角がたくさんありますが横軸が人数で、白い四角になっているところが自分の位置です。
自分より上に山があるなら、それは越えねばならない山です。

アルファベットでの判定ですが、
A・・・合格可能性80%以上
B・・・同60%以上80%未満
C・・・同40%以上60%未満
D・・・同20%以上40%未満
E・・・同20%未満
となっています。

記号でわかりやすいですが、
わかりやすいものには罠が潜んでいることもしばしばです。
Aでも落ちます。場合によってはEでも合格します。
我々はある程度経験があるので、
D判定だが今後伸びが期待できそうな生徒、
逆にB判定だが危ない生徒がわかります。
機械での判定ではなかなかわからないことですね。
鵜呑みにしないようにしましょう。
一番大事なのは、
志望校の過去問で合格点を取れそうかどうか、です。




一通り説明を終えました。
今はスマホ用アプリで模試の成績を見れるようになったので、紙の成績表は見ない人が増えたのではないでしょうか。
アプリの成績表は、情報が少なすぎて(成績表自体が断片的なのに)断片的な情報しか見ることができません。
一度はじっくりと紙の成績表を「読んで」みましょう。
共通テスト対策になりますよ。

あえて茨の道を選ぶということ

公開日 2022/06/01

「生きているっていう実感がある仕事がしたいです。」

6年程前でしょうか。
まだ私がこの塾を立ち上げる前、別の塾で指導していたある生徒S君の言葉です。


昨日生徒と話していてふと、思い出しました。
英語の授業で読んでいた文章に関連した、「多くの人々が通る整った道」か、「誰も通ったことのないような茨の道」か、という話です。
人生の喩えですね。


多くの人が通った道というのは何か。
多くの人が通る道というのは、
多くの人が通るので整備されやすく、
後に続くものほど楽に(楽というのもそれぞれですが)通ることができます。
ノウハウがたまっているので、それを教授されるとある程度の快適さが保証されます。


一方で、茨の道。
ほとんど、または誰も通ったことのないような道です。
地図はありません。
何が起こるかは、進んでみないとわかりません。
取り返しのつかないことになるかもしれません。
しかし、道を切り開いて行く時の高揚感、
新天地を発見した時の達成感は何事にも変え難いです。

こういう時代だからこそ


現代、特に日本という国はものすごく恵まれていると思います。
衣食住に困ることはなかなかありません。
病気をしても生き続けることができます。
大昔はそんなことはなかったでしょう。
狩に行かねば餓死します。
住む場所を考え、きちんとした住居を作らないと動物に襲われたり凍死したりします。
今はそんなこと考えられません。
実際、そんなに頑張らなくても命の危機に瀕することはそうそうありませんよね。
通信環境の発達で、家を出なくても娯楽はあります。
インターネットさえあればよいという人もいるでしょう。
頑張る「必要」がないということです。
若い世代ほど今現在の状況に満足しているのではないでしょうか。
だから、なぜそんなに頑張らないといけないの?と疑問に思う人がいてもおかしくないと思いますね。




そんな状況だから、「生きている」という実感が湧かないのも当然です。
「生きている」ことの尊さを肌で感じにくいのです。
だからこそ、あえて茨の道を進んでみるという選択には価値があると思います。
もちろん頑張らなくても生きていけるので、そういう人を否定するつもりは全くありません。
頑張らなくてもそれなりに一生楽しく過ごせると思います。
それで良いという人に押し付けることもしません。
しかし、茨の道を進むときの「生きている」という感覚を経験することはないでしょう。
冒頭のS君も、そんなことを感じていたのかもしれません。

数学が苦手な理由

公開日 2022/05/25

数学という科目は最も個人差の出やすい科目です。
ある人は教科書を読むだけで章末の問題が解ければ、
ある人は何度説明を受けてもちょっと問題文が変わるとわからなくなります。
なぜそのようなことがあるのか。
要因は一つではありませんが、大きなものを説明します。

「同じ」とみなす

「同じ」というのは人によって認識に差があります。
例えばこれ。

この二匹のイルカは、「個体」という目線では「違う」個体です。
背びれの形や模様なども違います。
人もそうですね。
しかし目線を上げて「種」として見ると、
バンドウイルカという「同じ」種になります。
さらに
イルカもヒトも、哺乳類という点では「同じ」になります。
これを図にすると下のようになります。

または下のようにも書けます。

このように、どのレベルの目線で見るかによって「同じ」か「違う」かは異なります。
大きな括り(上の図では外側、下の図では上の方)は抽象化を意味します。
ヒトやイルカなどが乳で子を育てるという共通点を抽出し、哺乳類と名づけています。
このように共通点を見出す抽象化が、学習する上で非常に重要な要素になります。

なぜ重要かをもう少し詳しく書きましょう。

高校数学で習う公式の一部を挙げます。

$$y=m(x-a)+b$$

$$y=a(x-p)^2 +q$$

$$(x-a)^2 + (y-b)^2 = r^2$$

数学が得意な人はこれらを「同じ」とみなします。
逆に苦手な人はこれらは関係のない「違う」ものとして捉えます。
この3つの公式の共通点は、平行移動です。
どれも次の説明で片付きます。
すなわち、関数f(x,y)=0 をx軸方向にp、y軸方向にq平行移動すると f(x-p,y-q)=0 となる。
以上です。
解説は書きません。
これが抽象化の例です。
とにかく今伝えたいのは、この1文が分かれば3つの公式を一つ一つ違うものとして捉える必要がなく、大して覚えることがない、ということです。
逆に言うと、
これを理解しないままでいるとそれこそ公式の「丸暗記」に終わり、覚えることが多いと感じ、すぐに忘れてしまうのです。

つまり、数学がいつまでたっても理解できない人はこの抽象化を行っていません。
中学数学からのつながりに気づいていない人も多いと思います。
高校数学には2次関数、三角関数、指数関数などありますが、すべては中学の比例・反比例や1次関数からつながっています。言うなれば、中学からずっと同じことを繰り返しているのです。

抽象化はヒトにしかできない

この抽象化というのは高度な技です。
$$x = 3$$
と書いてxと3は等しい、と言っても、
「xはxであって3とは等しいはずがない」のが普通の感覚です。
動物にはこれが理解できませんし(たぶん)、理解できないヒトがいるのも当然のことです。
ゆえにあまりに理解できない場合は数学から離れて他の得意なことを見つけるのも大事です。