あなたの勉強は評価ができるか?

公開日 2022/11/23

中学生は期末テストが終わりました。
お疲れ様でした。
高校1、2年生はこれからテストですね。
準備は進んでいるでしょうか?
計画を立てているでしょうか?
いつまでに何が終わる?
この質問に明確に答えられるようにしましょう。

「準備」をすれば物事はスムーズに動きます。
中学生高校生のみなさんの準備はテスト勉強です。
テスト勉強ならみなさんしていると答えると思います。

しかし私が今書いている「準備」のテスト勉強とは違うと思います。
みなさんのほとんどがやっているのは、
「とりあえず教科書の問題と授業プリントをやる」
「学校のワーク類をやる」
のようなものです。

これは「準備」とは言えません。
厳しく言うと、ですが。

「準備」というのは、

評価のできるもの

でなくてはなりません。
どういうことか。
評価ができるというのは、その勉強をした結果どのような効果があったか測定ができ、それを基に検証、そして次回への改善策が考えられるということです。

とりあえずやった勉強は効果測定ができません。
なぜなら、
何を、いつ、どこで、どのようにやったか、が雑然としているからです。

たとえば数学の勉強で、
とりあえず場当たり的に問題を解いていったとして、
あとはその結果(点数)だけを見ても得られるものはほとんどありません。
点が良かったとしても、勉強の中でなにが良かったかがわかりません。

一方、
少しでも勉強スケジュールを考え、
何をいつまでにするかを決めた上で勉強に取り掛かり、
その結果を得たならば、
何が原因として良い結果だったか、あるいは悪い結果だったかがわかりやすくなります。
前回と比べて単純に解く問題量を増やしたら順位が上がったのであれば、その点に効果があることがわかりますし、問題数を絞った結果芳しくなかったのなら演習不足という結論を出すことができるかもしれません。
因果関係までは行かずとも、相関性は把握できるかもしれません。

一言では、
経験を糧にできるかできないかの差
ということです。

基準を設ける

きちんと評価のできる準備をするには
数字を使うのが最も良いでしょう。
使う問題集を決め、
・1日あたりに取り組む問題数と時間
・復習の頻度
などを予め決めてから取り組むなど。
それをテスト後に評価し、次のテストでも同じような指標を使って改良していくのです。
たとえば、前回との違いを復習の頻度だけにすると、その変化が与える影響を測定しやすくなります。
(もちろん、問題が違うテスト間で比べるのはやや難しくもありますが)

地味な勉強が勝つ

公開日 2022/11/16

私は週3回泳ぎに通っているのですが、
そのプールの常連のおじちゃんおばちゃんたちに、来年の大会に出ないかと誘われました。
そもそもの目的は体力の維持向上でしたが、良い目標になるので参加することに決めました。
(大会とは言っても登録選手が出るようなものではないですが)
最近はクロールと背泳ぎの練習を中心にしています。
そのプールでは私が練習している時間は私より年配の方たちが9割5分なのですが、それはそれは元気な方達です。中には70歳で勢いよくバタフライを泳いでいる方もおり、あるいは私と同年代よりも体力があるんじゃないかというほどです。そのような先輩方に続きたいと思います。

大学受験生はいよいよ共通テストまで2ヶ月です。
模試の判定が返ってきたりして、焦る生徒が出始める時期です。
心理的に不安定になると起こりがちなのが、いろいろな情報に惑わされることです。
コロナが流行り始めた頃にもありましたよね。
特に塾生には、今まで勉強してきたことを継続してほしいと思います。

あまい誘惑

単語帳を1週間で覚える方法!
1ヶ月で逆転合格!
などなど、裏技的な動画を探して見たりしていないでしょうか。
見ていたら黄色信号です。

そのような情報が間違っているとは言いません。
「少数の」成功体験はあるでしょう。
「実行できれば」うまくいくこともあるかもしれません。

ただ、知っておかねばならないことは、
自分で考えない人ほどそういうあまい誘惑に引っかかる、ということです。
そして、引っかかるとほぼ100%失敗します。

このような誘惑は世の中に腐るほどあります。
冒頭で水泳の話をしましたが、
「これをするだけで○倍速く泳げるようになる!」
みたいな動画や記事がありますが、見てみると正しいが大したことは言っていないし、そもそもそんないきなり速く泳げるようになることなんてありません。
定番となりましたが、
「このサプリを飲むだけで1週間で3kg痩せる!」
という宣伝もそうですし、
ネット記事の煽り文句も同じです。
いくらでも出てきます。

なぜこのような文句が多いかというと、それに引っかかる人が多いからです。
しかしそれらが完全に悪いというわけではありませんし、何か法に触れるというものでもありません。

地道な積み重ね

勉強にしろ何にしろ、
結局これしかないのです。
数学が得意になるためには計算練習が必要ですし、英語が得意になるためには単語をたくさん覚えることです。
シュートが得意になりたいなら何本もシュート練習が必要ですし、サーブが得意になりたいなら誰よりもサーブを打つ練習をすれば良いのです。
このような一見地味な練習が、あとからどんどん効いてきます。
その効果はなかなか衰えません。
その一方で、一発逆転的なのは効果は一瞬。
その人の実力にはなりません。

発想の転換

公開日 2022/11/09

高3の自習時間を記録していますが、
6月末から11月初めまでの記録を集計しました。

累計時間の1位は、615時間。
週平均時間の1位は、33時間でした。
日曜日の学習時間は含めていないので、実際はもっと多いと思います。
ちなみに週平均時間の最下位は、23時間です。

話は変わりまして、
今日のお題は発想の転換です。
数学の問題の解き方とかそういうものではなく、もっと大きな話です。
生きていく上で大事な考え方だと思っていますので紹介します。

短所を克服する?

特に、自分の短所への向き合い方です。
短所というと、やや悪いイメージがあるかもしれません。
だから短所は治そうという発想にしばしばなりますが、
最も重要なのは、自分の長所であれ短所であれ、
それを受け入れることではないでしょうか。

塾に来てくれている生徒で、
忘れ物がなおらない生徒がいます。
Aさんとしましょう。
Aさんはよく忘れ物をしてしまいます。
あるときはノートを忘れ、
あるときはテキストを忘れ、
あるときは筆箱を忘れます。
持っていくものをノートに書いていてもノートを見ることを忘れます。
チェックリストを渡しても、それも忘れます。

もちろん長所もあります。
忘れたら正直に話してくれますし、
他の生徒とはちがって必ず立ち止まって挨拶をしてくれます。

忘れ物がないようにする努力は必要だと思いますが、
Aさんの性質を考えるとなかなか治りそうもありません。
忘れ物に限らず、
このようなことに頭を抱えていらっしゃる保護者の方々、また生徒も少なくないと思います。

考え方を変える

ではAさんはどうすれば忘れ物がなくなるのか?
私は考えた結果ある提案をしました。
それは、
忘れ物が発生しない環境を整える
ということです。

どういうことか説明します。
簡単です。
そもそも、なぜ忘れるのかというと
物を持って移動するからです。
筆箱を学校のカバンに入れたり、教室で出したり、宿題のため家で使ったり、塾へいくとき別のカバンに入れたり。
あちこち移動させるから、どこかで忘れるのです。
だったら、移動させなければ良いのです。
つまり、筆箱を複数持っておけば良いということです。
少なくとも学校用と塾用の二つでもあれば、筆箱を忘れるということはまずなくなるでしょう。
なんなら塾に置いておけば良いです。
(今の所ロッカーは高校生のみに貸しています。)

忘れる、というのは将来大人になって働き始めてからも問題になります。
もう一度書きますが、忘れ物をなくす努力は必要です。
しかし、どうしても忘れてしまうという人が存在することも事実です。
ではそのような人はどうすべきかというと、
たとえば、

・周囲の人たちに、自分はどうしても忘れ物をしてしまう人間であるということを予め伝えておく。
・前述のように、そもそも忘れ物が発生し得ない状況を作る。
といった対策を打つことでしょう。

誰でも短所はあるものなので、それを周りの人間がサポートするという環境とそのような空気が重要です。
人の短所を責め続けたところで、
何の価値も生まれませんからね。

ちなみに

こういう話をすると、努力しないことの理由にする人がいますが、
逃げるための免罪符にはなりませんので釘を刺しておきます。

公式集は捨てる

公開日 2022/10/12

先日、本屋で参考書漁りをしていたところ、
おそらく高校生の子どもを持つ親らしき女性が店員に、
「数学の公式一覧が載っているような本はありませんか。」
というようなことを尋ねていました。
そこそこ大きな本屋で、35歳くらいの男性店員さんは「自分はまだ参考書担当になったばかりで十分に把握してなくてすみません。」というようなことを言っていました。
私は、高校数学の公式かつ教科書に載っていない応用的な公式まで幅広く網羅されている本を教えるのか、話を聞く限りそのような公式集を持っていてもおそらく使いこなせないような学力なのでやめた方が良いと言うべきか悩んでいる間にその二人は去っていました。

公式をそのまま覚えるだけになっていないか

使い物になりません。
たとえば、三平方の定理の公式は
$$a^2 + b^2 = c^2$$
ですが、これをそのまんま文字で覚えたところで問題が解けるでしょうか。
a,b,cは直角三角形の3辺の長さで、cが斜辺であることを知っていないと使えませんよね。

他にも、
高校一年生は三角比をすでに習い、テスト範囲でもあったと思います。
三角比の定義が重要ですが、

$$sinθ = \frac{y}{r}$$

$$cosθ = \frac{x}{r}$$

などというふうにおぼえていないでしょうか。この文字のまんま。
それでは使い物になりません。
三角比の定義はわかっていません。

本当にわかっている生徒はもちろん上記のように答えることもできますが、
三角比の定義を説明してください、という問いに対してそのようには答えません。
次のような図で答えます。

これに加えて、三角比の相互関係が三平方の定理であることを説明できれば文句なしです。

公式の証明が習得の近道

証明が好きではない中学生高校生は多いですが、
証明を学習した方が、むやみに問題を解くよりも力がつきます。
なぜなら、
どのような場面でその公式を使うかがわかるからです。
公式をいつ使えば良いのかわからないという人は、その公式をただの文字列として捉えています。
公式が導かれる背景を知りません。
そもそも公式は、いつ使うのかを考えるのではなく、
必要だから使うだけです。

この2次方程式をどう解こうか?
→因数分解できないから解の公式を使おう!

ですよね。
また、証明を学習することは、
特に高校生は解答作成力に関わります。
問題に解答するには過程を書かねばなりませんが、
それ自体、自分の解答を証明するものであることに気づいてください。

有意義な失敗、無意義な失敗

公開日 2022/09/28

高校は今週末から、中学は来月中旬に定期テストが行われるところが多いですが、中高生の皆さんはテスト勉強は進んでいるでしょうか。

前回の定期テストで失敗してしまった人は、改善ができているでしょうか。

たとえば、
前回のテスト勉強は1週間前から初めて勉強時間が足りなかったのに、
今回も1週間前から始めていませんか。
それなら同じように失敗しますよ。
テスト期間はテスト1週間前だから?
テスト勉強を1週間前からしか始めてはいけないなんていうルールはありませんし、もしあったら破ってください。
同じようにやれば同じような結果が出てくる。
当然のことです。

前と同じになってないか?

と自分に問いかけてほしいと思います。
少し質問に答えます。


Q、テスト範囲がわからないのでできません。
A、簡単に予想できます。前回のつづきから最近習っているところまでです。

Q、部活があるのでできません。
A、それは本気でやっている?
  Yes→日々の授業を誰よりも大事に受けてください。
  No→部活しながらでもできますよね。

Q、勉強の仕方がわかりません。
A、まずそもそも、あまり勉強していませんよね。(しようとしていませんよね。)

Q、勉強してみたけどなかなか結果が出ません。
A1、足りません。行動量が足りません。試行錯誤を10回以上やってますか?
A2、椅子に座る石像と化していませんか?

Q、集中が長続きしません。
A、睡眠不足。栄養不足。運動不足。

Q、自分は勉強に向いていないと思います。
A、1日8時間もしていないのに向いていないってわかるんですか?

意味のある失敗をする

失敗は成功のもととはよく言いますが、
やって良い失敗とやってはいけない失敗があります。

やって良い失敗とは、
前回とは違う結果を出すために、
①仮説を立て
②検証する
ということをしっかりやり、その結果失敗してしまうことです。

これならば次はどのようにすべきかが少しずつわかってきます。
たとえば、
今回は前日の復習と新しい問題を解くことを繰り返した。
その結果、復習量が多過ぎて範囲内を十分時間をかけて学習しきれなかった。
問題点は、復習しなくても十分なものまでしていたことなので、次回は到達度ごとに問題を仕分けし、復習すべき問題を選ぶ。
このように次への課題が明確に浮かんでくるような失敗が良い失敗です。

対して、やってはいけない失敗とは、
明らかにそれを回避できたであろう失敗です。
同じように1週間前から始めて間に合わない失敗はこれに当てはまります。
何が良くないかというと、
ほとんど進歩がない点です。
やって良い失敗と比べて、
得られるものがありません。
残るのは、ああ、またやってしまった、
という虚しい感情だけです。

失敗はいくらやっても良いものですが、
このような失敗はいくらやったところで無駄に終わってしまいます。

3000時間

公開日 2022/09/21

何の数字か分かりますか。
これは九州大学に合格するのに必要な最低自習時間です。
とはいっても私個人の感覚に過ぎないのですが。
これだけではわかりにくいので計算してみましょう。

例えば、
毎日平日3時間、休日5時間勉強したとします。
どれほどの期間で3000時間に到達するか。

1週間に、$$3 \times 5 + 5 \times 2 = 25 $$

25時間になります。
何週間で3000時間に達するかというと、$$3000 \div 25 = 120$$
120週間です。
1年は52週間ですので2年4ヶ月ほどかかります。
つまり、このペースであれば高1の秋から継続しないと足りない、ということになります。

平日と休日の勉強時間を変えて計算したのが下の表です。

高1の初めから高3の2月までは148週間です。
高1から始めたとしても、平日2時間休日5時間程度では足りません。
5時間8時間、週41時間ならば73週間なので高2の今の時期からでもなんとか間に合います。
ちなみに5000時間というのは、東大合格の目安です。


出典:https://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/daigaku_jittai/hon/daigaku_jittai_1_2_3.html

これはやや古いデータですが、
高3の時に1日6時間、つまり週42時間の勉強をする人は全体の約30%です。
高2からその時間を継続してできる人が合格するのは納得という数字ではないでしょうか。

つまり

高2は今から受験勉強を始めると、
九大合格の可能性が高まるということです。
もちろん個人差がありますが、この時期から意識してやるのと高3になってから始めるとでは、ものすごく成績の上げやすさが違います。

海馬、使ってる?

公開日 2022/07/06

7月に入りました。
高3生は部活を引退した生徒がほとんどで、自習時間は週30時間を超える生徒が増えました。
長期戦になるので規則正しく過ごし、学習を習慣化しましょう。
今日は脳の話です。

海馬とは

学習において重要な役割を果たす脳の部位です。
記憶力に関わっており、新しい情報を整理整頓する機能を持ちます。
記憶は数秒から数十分、数時間とどめておく短期記憶とそれより長い間おぼえておく長期記憶がありますが、海馬は特に短期記憶に関係しています。おぼえたことが海馬で仕分けされ、重要だと判断したものを大脳新皮質という部位へ送り長期記憶化します。

海馬を使う機会が減る?

記憶力が弱い(または弱いと思い込んでいる)人は、もしかするとこの海馬を使う機会が少ないのかもしれません。
海馬は脳の中で唯一鍛えることができる部位だと言われています。
日頃おぼえることが苦手だと思っている人は習慣的に覚えるということをしていない、というのが私の仮説です。些細なことの積み重ねは大きな変化をもたらします。

普段の生活で、短期的に「覚えよう」とすることがどれくらいあるか。
スマホやパソコンなどデジタル端末の普及で覚える必要がかなりなくなりました。
例えば、
電話をするためには相手方の電話番号を覚えておくか、電話帳で調べてそれを一時的に記憶し番号を打っていました。今はスマホの電話帳やウェブの電話番号を押すだけで簡単にかけられます。
カーナビがあるので、事前に地図を読んで国道〇〇号線とか、どこどこの角を左に曲がるとか覚える必要もありません。指示に従えば(ときどき変なところへ連れて行かれますが)いつの間にか目的地へ着くことでしょう。
知りたいことはいつでもどこでもすぐに検索して調べることができるので、積極的に覚えようとしない限り覚えることはないでしょう。

特に最近小中高生について気がかりなのは、プリントで授業されることが非常に増えたことです。
プリントで学習するメリットはあります。
もともとは板書を写すのに使った時間を考えたり問題を解いたりするのに使えます。
しかし、高校生はまだしも、小中学生にはデメリットの方が大きい気がします。
細かく見ると板書を書き写す時というのはすごく頭を使います。
先生が黒板に書いたことを、パッと見て(短期的に)覚えて、自分のノートに書き写します。
一時的に覚える量が多いほど黒板を見る回数が少なくて済み、書き終わるのも早くなります。
書き写す時は、黒板とノートでは大きさが違うので、その比を考えて文字の大きさや改行する場所などを決めねばなりません。きれいに書くためにバランスを考えます。
文字を書く動作もそうです。
プリントがなければ9年間でものすごい量をこなしますね。
これだけでも相当海馬は鍛えられると思います。

鍛える方法

前述のように、海馬は鍛えることができます。
生活の中で鍛える方法を紹介します。

①運動する
1日30分ほどの有酸素運動(息が上がらない運動)は効果的なようです。
朝夕の通勤通学でも十分取ることができますね。
特に朝日を浴びることがセロトニン分泌を促しストレスにも効果があるので、事情がない限り車で学校まで送ってもらうことはすすめません。歩きましょう。

②ちょっとしたことを覚えようとする
記憶が苦手な人は、そもそも覚えようとしていないと思います。
海馬は覚えようとしないと覚えてくれません。
例えば、電話番号やメールアドレス、アカウント名を入力する際にコピペしないで覚えて入力するなど。
板書と同じでとにかく少しの間記憶しておく、という動作を繰り返すことが大事です。

③よく眠る
睡眠が重要であることはもうかなり知られてきました。
これについては過去にがんばって書いたので読んでください↓
寝る子は育つ①
寝る子は育つ②
寝る子は育つ③

④冒険する
今はいろんな場所へ入るとすぐ怒られるようになってしまいましたが、新しい場所を探検することは非常に脳が鍛えられます。興味深いことにこれはゲームでも良いようで、3次元の世界を冒険するようなゲームは特に効果的です。マインクラフト面白いですよね。

ちなみにこれは大人になっても鍛えられます。
認知症予防にもなるので軽いトレーニングを日頃から行うと良いでしょう。

それは本当に効率が良いのか

公開日 2022/06/22

昨今は効率というものが神格化されてきているような気がします。
かく言う私も、何事もいかに早く、上手に事を済ませるかは常に考えていますが、
一見「効率が良さそう」でも実際にはそうでないこともあります。
これを学習の観点から見てみたいと思います。

早く単語を覚えられるか

例えば英単語を早く覚えられる方法はあります。
基本的には思い出す回数を増やしたり、寝る前に勉強したりすればある程度効率よく覚えられます。そういった情報はすでに巷に溢れているので今回は書きません。
実行すれば確かに覚えられるのですが、この実行する側にある視点がしばしば抜け落ちており、それが長期記憶化です。
つまり、学校の単語テストなどの急場凌ぎにはなるのですが、受験対策として、さらには一生物の教養として身につけるには至らないのです。
ではどうするかというと、単語の場合は単語帳で勉強が終わってはいけません。
文章の中で何度も出会ったり、実際に経験してみてそれが少しずつ自分のものになっていきます。
例えば、
biomimetics (バイオミメティクス、生物模倣)という単語がありますが、オナモミからマジックテープ、カワセミから新幹線が生まれたことを知り、それを実際に見てみたり、より詳しく調べてみる、という過程を経ると忘れることの方が難しくなります。

問題の解法を忘れてしまう理由

数学をいくら勉強しても伸びない人は、目の前の問題を解くことだけに集中しています。
例えばテスト前に範囲指定してある問題をひたすら解いていくと思います。
確かに、高校までの定期テストや中学ではそれが通用します。
ほとんど見たことがある問題しか出題されないからです。
要するに上で書いた単語テストの勉強に似ているわけです。
完全にはわかっていなくても、とりあえず答えの出せる手続きを覚えていけばテストでは解答できるので、本人はその勉強したことがわかったつもりになっています。
1、2回解けばできるので、一応「効率」は良いのです。

しかし、これも単語と同じようにすぐ忘れてしまいます。
ではどのような勉強をすべきかというと、基本を理解することです。
わかりやすくするため例題を出します。

$$4^x – 5 \cdot 2^{x+1} – 24 = 0$$

この方程式を解くときに最初苦戦する人が多いのが、指数の処理です。
\(4^x \) を \((2^2)^x = (2^x)^2 \) と変換したり、\(2^{x+1} \)を\(2 \cdot 2^x \) と変換する必要があります。
このとき、この処理をそのまま覚えようとしていてはすぐに忘れてしまうか、または応用が効きません。
\((2^2)^x = (2^x)^2 \) という変形ができるのをしっかり理解するべきです。
例えば、\((2^3)^4=(2^4)^3\) と変形できることを試してみたり、\(\)
そもそも\(2^3=2\cdot2\cdot2\)であるから、
\((2^3)^4=(2^3)\cdot(2^3)\cdot(2^3)\cdot(2^3)=2^{12}\) と計算でき、さらにそれを一般化して
\((a^m)^n=a^{mn}\) が得られます。
指数法則を理解するわけです。

この一見「効率の悪そう」な勉強は、定期テストが終わった後も威力を発揮します。基本を丁寧に勉強しているので、すぐに忘れるようなことはありません。とりあえず問題を解くよりもむしろずっと効率が良いのです。

時間をかけてじっくりと

このような視点が蔑ろにされていないかが私の懸念するところです。
何でもスピード重視、効率重視で進めた結果、皮肉にもその逆の結果が生まれてしまいます。
手間暇をかけてじっくりと育てれば、その果実は大きく実り、土もまた次の世代を育む力を持ちます。手間を惜しむと、その果実は大きいかもしれませんが次の世代は育たないでしょう。
効率よく覚えたものは、効率よく忘れてしまうのです。

数学が苦手な理由

公開日 2022/05/25

数学という科目は最も個人差の出やすい科目です。
ある人は教科書を読むだけで章末の問題が解ければ、
ある人は何度説明を受けてもちょっと問題文が変わるとわからなくなります。
なぜそのようなことがあるのか。
要因は一つではありませんが、大きなものを説明します。

「同じ」とみなす

「同じ」というのは人によって認識に差があります。
例えばこれ。

この二匹のイルカは、「個体」という目線では「違う」個体です。
背びれの形や模様なども違います。
人もそうですね。
しかし目線を上げて「種」として見ると、
バンドウイルカという「同じ」種になります。
さらに
イルカもヒトも、哺乳類という点では「同じ」になります。
これを図にすると下のようになります。

または下のようにも書けます。

このように、どのレベルの目線で見るかによって「同じ」か「違う」かは異なります。
大きな括り(上の図では外側、下の図では上の方)は抽象化を意味します。
ヒトやイルカなどが乳で子を育てるという共通点を抽出し、哺乳類と名づけています。
このように共通点を見出す抽象化が、学習する上で非常に重要な要素になります。

なぜ重要かをもう少し詳しく書きましょう。

高校数学で習う公式の一部を挙げます。

$$y=m(x-a)+b$$

$$y=a(x-p)^2 +q$$

$$(x-a)^2 + (y-b)^2 = r^2$$

数学が得意な人はこれらを「同じ」とみなします。
逆に苦手な人はこれらは関係のない「違う」ものとして捉えます。
この3つの公式の共通点は、平行移動です。
どれも次の説明で片付きます。
すなわち、関数f(x,y)=0 をx軸方向にp、y軸方向にq平行移動すると f(x-p,y-q)=0 となる。
以上です。
解説は書きません。
これが抽象化の例です。
とにかく今伝えたいのは、この1文が分かれば3つの公式を一つ一つ違うものとして捉える必要がなく、大して覚えることがない、ということです。
逆に言うと、
これを理解しないままでいるとそれこそ公式の「丸暗記」に終わり、覚えることが多いと感じ、すぐに忘れてしまうのです。

つまり、数学がいつまでたっても理解できない人はこの抽象化を行っていません。
中学数学からのつながりに気づいていない人も多いと思います。
高校数学には2次関数、三角関数、指数関数などありますが、すべては中学の比例・反比例や1次関数からつながっています。言うなれば、中学からずっと同じことを繰り返しているのです。

抽象化はヒトにしかできない

この抽象化というのは高度な技です。
$$x = 3$$
と書いてxと3は等しい、と言っても、
「xはxであって3とは等しいはずがない」のが普通の感覚です。
動物にはこれが理解できませんし(たぶん)、理解できないヒトがいるのも当然のことです。
ゆえにあまりに理解できない場合は数学から離れて他の得意なことを見つけるのも大事です。

その教材の使い方あってる?

公開日 2022/05/18

学生の皆さんは毎日何かしらの教材を使っていますが、
それがどのような目的の教材なのかを理解しているでしょうか。
次のような質問に答えられるでしょうか。

✅その教材から得られるものは何か。
✅どのような難易度の教材なのか。
✅その教材を使う時期は?

これらを把握せずに使い続けると、
効果は半減、いやそれ以下でしょう。
その時間がもったいないです。
今日は教材の種類とその使用法についての解説です。

3種類

教材は大きく分けて以下の3種類存在します。

①解説書
②演習書
③過去問

それぞれについて解説します。

①解説書

つまり教科書のようなものです。
例えば、

このような公式事典や文法書、教科書の内容をより噛み砕いて説明されるものです。
使用目的は、ずばりインプットです。
・全体像の把握
・学習内容の理解を深める
・問題集の解説では不十分なところを補う
というふうに使います。

特徴としては、市販のものは教科書よりもわかりやすい編集であったり、口語調で書かれていたりするので読む人によっては教科書より使いやすい点があります。
また、入試を意識したより深い内容まで解説されるものもあります。

②演習書

言い換えると問題集です。

使用目的はずばり、アウトプットです。
解説書で学んだことを実際に使ってみるということです。
・学んだことの理解度チェック
・知識の活用の仕方を学ぶ
・多くの問題に触れて、慣れておく
といった使い方をします。

特徴は、問題量が豊富であることと、解説は簡素なものが多いです。

③過去問

入試や資格試験の過去問です。

使用目的は、過去問の研究・演習です。
・どのような難易度の問題が出題されるのかを知る
・傾向を知る
・問題形式に慣れる
などの目的で使います。

特徴は演習書に似ており、解説は簡素です。
3〜15年分、中には50年分の問題が掲載されているものもあります。

NG行動

それぞれの特徴、使用目的がわかったことで、
するべきでない使い方も見えてきます。
学生が陥りがちなNG行動の例を挙げます。

レベルの合わない教材を使う

受験生にありがちです。
自分の習熟度に合ったものを使わないと非常に勉強効率が悪いです。
例えば、
ほぼ全て知らない単語が載っている単語帳で単語を覚えようとする。
受験勉強開始時にいきなり過去問演習をし始める。
など。
目安として、半分くらいはすでにわかるものを使った方が良いです。
演習書で自分のレベルを把握しましょう。
自分ではわかっているつもりでも、実はそうではないことは多々あります。

演習書ばかり使う

問題を解くばかりの人、いないでしょうか。
たくさん解くことは大事です。
しかし、そればかりでは考える力は伸びません。
特にこれは、抽象的な思考が重要な数学で差がつきます。
解説をしっかり読み込んでいるでしょうか。
また、演習書の解説では不十分な点を解説書で補っているでしょうか。
問題集だけでは、どうしても断片的な解説にとどまります。
ですから深い学習ができておらず、いわゆる応用問題に手も足も出なくなります。
問題集で解いた問題そのままの問題しか解けない、ということです。
学校で配られる教材は、ある理由で解説が雑なものが多く、つまり学校の先生の授業での解説を前提として作られているので独学には向きません。


道具には使い道がある

世の中の道具にはたいてい、「使い道」があります。
何か目的があって、それに達する手段です。
想定されたもの以外の使い道をすることもできますが、受験の世界では不要です。
目の前に定規があるのに、わざわざノートを使って直線を引きませんね。
目的をはっきりさせ、それに適う道具を使うことが大事です。
決まったことを決まったようにやらないといけないのに、
「思考力」を育てようとする矛盾も起こっているわけですが。