3000時間

公開日 2022/09/21

何の数字か分かりますか。
これは九州大学に合格するのに必要な最低自習時間です。
とはいっても私個人の感覚に過ぎないのですが。
これだけではわかりにくいので計算してみましょう。

例えば、
毎日平日3時間、休日5時間勉強したとします。
どれほどの期間で3000時間に到達するか。

1週間に、$$3 \times 5 + 5 \times 2 = 25 $$

25時間になります。
何週間で3000時間に達するかというと、$$3000 \div 25 = 120$$
120週間です。
1年は52週間ですので2年4ヶ月ほどかかります。
つまり、このペースであれば高1の秋から継続しないと足りない、ということになります。

平日と休日の勉強時間を変えて計算したのが下の表です。

高1の初めから高3の2月までは148週間です。
高1から始めたとしても、平日2時間休日5時間程度では足りません。
5時間8時間、週41時間ならば73週間なので高2の今の時期からでもなんとか間に合います。
ちなみに5000時間というのは、東大合格の目安です。


出典:https://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/daigaku_jittai/hon/daigaku_jittai_1_2_3.html

これはやや古いデータですが、
高3の時に1日6時間、つまり週42時間の勉強をする人は全体の約30%です。
高2からその時間を継続してできる人が合格するのは納得という数字ではないでしょうか。

つまり

高2は今から受験勉強を始めると、
九大合格の可能性が高まるということです。
もちろん個人差がありますが、この時期から意識してやるのと高3になってから始めるとでは、ものすごく成績の上げやすさが違います。

全体から部分へ

公開日 2022/09/14

要領が悪い
と言われたことはありませんか。
私はあります。
それは大学生の時のアルバイトで、当時あるレストランのホールをしていたのですが、始めて数ヶ月はいろいろな仕事の段取りを考えて、または同時進行するというのがものすごく苦手でよく怒られていました。

勉強の仕方にも要領の良し悪しがあります。

同じ時間で成果の出方が違うということです。
どのような成果が出るかはそれだけでなく、生まれてこの方何を経験してきたか、どのくらいの語彙力があるか、など様々な要因があるわけですが、今回はその中でもどのような学習の進め方が良いのか、書いていきます。

はじめは細かいことを気にしない

要領が悪いと言われる主な原因です。
たとえば、英単語の勉強をしていたとします。
have

は頻繁に使われる単語ですが、中学ではじめて勉強するときは

I have many books.
とか
She has two sisters.

などの所有の意味で出てきますね。
しかしこれをはじめからですよ、

have
名詞
1、有産者; (資源・核などを)持っている国
2、詐欺、かたり

助動詞
1、現在完了
2、過去完了
3、未来完了
4、完了不定詞
5、完了動名詞

動詞
 持っている、いる、ある、手に入れる、食べる、経験する、かかる、してもらう……
(出典:https://ejje.weblio.jp/content/have)

というふうに全部の用法を覚えるでしょうか?
滅多に使わないものだってありますよね。
そんなものまで最初から覚えようとしていたら何年かかるかわかりません。
とりあえず最初は、「持っている」って意味なのか、へぇ〜
くらいで良いですね。

これは分かりやすいように極端な例を出しただけで、
同じようなことをやっている中学生高校生は多いです。

全体から部分へ

要領良く学習を進めるには、
自分が今どのような場所にいるかを把握する必要があります。
ある生徒の頭の中が整理できているかどうかがかなりわかってしまう質問があります。

「勉強している科目の分野、単元の名前を言えるか」

例外なく、成績の良い生徒は答えられます。
一字一句正確である必要はありません。
これが言えないのは、自分が全体のうちどの部分を勉強しているかがわかっていない、つまり、そこが主要な幹なのか、細かい枝の部分なのかを把握していない、ということです。
頭の中の違いのイメージです↓

私はよく目次を見るように言います。
この枝分かれ構造を確認しながら勉強するのとそうでないのとでは明らかに成果に違いが出ます。
最初から枝の末端まで勉強する必要はないのです。

全体→部分
言い換えると
大きなこと→小さなこと
という順番で進めると良いということです。

いつ学力が上がるのか?

公開日 2022/08/24

勉強しても勉強してもテストの点数が上がらない、成績が上がらないという生徒がいます。
まずは「学力」と「成績」が違うことを理解しなければならないのですが、今回の主旨はそこではなく、
勉強したはずなのに成果が出ない原因についてです。

問題を解いたときではない!

よくある勘違いの一つです。
問題をたくさん解いたら学力が上がる。
それ、間違いです。

いや、もちろん完全に間違いというわけではありません。
問題をたくさん解くことは大前提です。
必要です。
しかし、問題をたくさん解いたからと言って必ずしも学力が上がるわけではありません。
これを数学風にいうと、
問題を多く解くことは、学力が上がるための必要条件であるが十分条件ではない、ということです。

これは頭ではわかっているつもりの人も多いと思いますが、
解くだけではダメなのは、
成長していないからです。

数学の問題を解きました。
その後、考え方のポイントを押さえて
もう一度「自分で再現」できるようにしているでしょうか。
解法を一通り読んで、納得したら次へ進む。
それだけしかしない人の方が多いでしょう。
頭で理解することと、それを使えるようにすることには大きな差があります。
使えないと、試験の際に問題は解けないのです。

つまり、
①問題を解く

②解説を読んで理解する

③何も見ずに解答を再現してみる

これを大量にこなすことで学力が上がります。
①と②の半分くらいまでしかしない人が多数であると思います。

英語にしても、
ただ文法問題を解いて答え合わせをするぐらいではできるようになりません。
しっかり暗記をして、それを使っているでしょうか。
どのような場面で使われるかを説明できるでしょうか。
学力が上がるのは、
表現を覚えたとき、表現の意味を日本語で言えるようになったとき、それを使えるようになったときであって、
問題を解いたときではありません。

これを勘違いしたままだと、
いつまで経っても成果が現れないのです。

負荷をかける

勉強にしろ何にしろ、
成長するためには負荷をかける必要があります。
勉強で言えば暗記。
スポーツで言えば走り込み。
ゲームで言えばレベル上げ。
負荷なしに成長はありえません。
負荷をかけることが辛いことだとばかり思っている人は考え方を改めましょう。
慣れれば楽しくもなってきます。

「モチベ」は後付けでも良い

公開日 2022/08/10

将来の夢は何ですか?
どんな仕事に就きたいですか?
志望校はどこですか?

学生の頃はこういうことをよく訊かれますが、
これらに対して理由をつけて明確に答えられるでしょうか。
おそらく、大半の学生はそうでないと思います。
これは勉強への「モチベ」がないと主張する人への記事です。

モチベとは

motivation
動機、やる気と訳されます。
ある行動を起こす理由となるものですね。
医者になりたいから大学の医学部を目指すとか
サッカーをしたいから強豪の〇〇高校に進学したいとか。
しかしどちらかというとこの言葉は、
ネガティブな意味で使われることの方が多いです。

勉強するモチベがない

というふうに。

しかし、そういう子どもが(大人も)いるのは当然でしょう。
例えば小中高校生が、大人が職場でどのような仕事をしているか知っているでしょうか。
知っているとしてもなんとなくで、具体的な業務内容などはわからないはずです。
イメージが湧かないと思います。
だから、将来の仕事のために勉強した方が良い、
と言われたところで、なかなかそれがモチベとはならないのです。
そうではありませんか?

このように、
「モチベ」がない、という人へ
私から一つ提案があります。

そんなものなくても良い

自分の好きなことを探そうとか
自分に合った仕事をしようとか
言われますが、順番が逆です。

自分が今やっていることを好きになるんです。

つまり、最初から好きで勉強をやる必要はなく、
勉強を好きになろうとするということです。
勉強に限ったことではありません。
文化祭ってなんか面倒臭そうって思っていても、原則として参加しないといけません。
それならば、それを楽しむ努力をした方が良いです。
仕事をしたくないかもしれませんが、働かざるもの食うべからず。
就いた仕事は責任を持って取り組むべきです。
それなら文句ばかり言わずにどうしたら楽になるか、どうしたら楽しくなるかを考えた方が有意義です。

そして、
勉強をやりながらだんだん「モチベ」が湧いてくるわけです。
数学がわかるようになってきた、もっとたくさんの問題を解けるようになりたい、と。
仕事に慣れてきたが、もっと改善の余地があるからこうしていきたい、とか。
自分の置かれた環境に適応していくんです。
そうすれば自ずと「モチベ」は生まれてきます。

一番最初は、
本当に些細なきっかけでも良いです。
他の人に自信を持って話せるような、立派な動機なんて必要ありません。
話す必要が出てきて、自分をよく見せたいのなら、作って話せば良いだけのことです。
それに、すべての行動に理由がある人なんて
見たことありませんよね。

頭が良いとはなんなのか

公開日 2022/07/27

学校にいる限り、「頭の良さ」というのは良くも悪くも意識せざるを得ません。
しかしこの「頭が良い」とは一体何なのでしょう?
このテーマに限りませんが、
頭が良いことの定義が人によって少しずつ異なるので大体話が噛み合いません。
この記事は「自分は頭が悪い」と思い込んだり、不安になっている人のための記事です。
結論を先に書くと、全く心配はいらない、です。

そもそもなに?

頭が良いとはどのような状態を指すのでしょうか。
テストの点数が良いことでしょうか。
IQが高いことでしょうか。
中学生や高校生が想像するのはこの辺りだと思います。
大人もこのような数値で子どもを測りますもんね。
しかし頭の良さにももっと種類があります。
正確には範囲を広げて、「身体の良さ」でしょうか。
例えば、
手先が器用であったり、料理の要領が良かったり、他の人の気持ちを察するのが上手であったり。
これらも頭の良さではないでしょうか。
頭と身体と分けるのがよくないのかもしれませんね。
テストの点数が平均点以下だったとしても、テストが得意な人よりこれらが上手にできる人はたくさんいると思います。何でもできる(ように見える)人もいますがそんなのは極々まれです。
テストで測れる能力なんて高が知れています。
言いたいのは、
頭の良さなんて対して変わらない
ということです。

十で神童十五で才子、

二十過ぎればただの人。
っていう言葉があります。
幼少期に並外れた能力を発揮した人でも、大人になれば平凡になることがよくある、という意味です。
というよりは、その人に皆が追いつくという表現の方が正しいかもしれません。
子ども時代にできることに差があるのは、ほとんどは成長スピードの違いだと考えて良いでしょう。
子どもの時に周りよりできるからと言って鼻を伸ばしていると、大人になって追い抜かれるということでもあります。

では大人になってどこで差がついていくかというと、環境・習慣です。
子ども時代に学校の勉強に励んで成果を出した人は、何かへ向けて継続する力をつけていますし、友人など周りの人もそのような人が多いです。そういうのが当たり前になっているから、大人になっても成果を出しやすいということです。
もちろんこれは学校の勉強に限りません。
何だって良いと思います。
何か一つのことに打ち込むことが大事ですね。
何よりも行動すること。

先輩の話の鵜呑みは危険

公開日 2022/07/23

いつも通り水曜日にブログをアップしようとしていたのですが、海外からサーバーへのアクセスを制限され遅れてしまいました。楽しみに読んでくださっている方には申し訳ございません。
以下、記事本文です。

受験本番と言われる夏がやってきました。
難関を目指している生徒は言われるまでもなくすでに本番モードではあると思いますが、この期間はいつもよりも自分に必要な勉強をする時間が取れるので必ず「具体的な」目標を立てて実行しましょう。

合格体験記

同じ学校の先輩の合格体験記を読むことがあると思います。
あるいは実際に話を聞くことがあるでしょう。
いろいろな助言をもらいます。
例えば、
〇〇という参考書を3回やったら合格した、とか
△△の単元は1週間集中してやれば終わる、とか
夜にせずに朝勉強したほうが良い、とか。

模試の判定が返ってきて結果が芳しくないと、焦って方法を変えたり他人の真似をしようとしてしまうことがあります。
そういうのをそのまま鵜呑みにするのはよくありません。
このような助言の正しい認識の仕方を知っておきましょう。

前提が全く違うことを知る

そもそも、全く同じ人間はいません。
それまで育ってきた環境などが違うので当然です。
つまり、それは学習面についても言えます。
例えば、
ある問題集を3回やったとして、全く同じ成果が出ることはまずありません。
その方法で成功した先輩は、学校の授業を受けた時点でかなり理解度が高かったのかもしれません。
練習して計算スピードを上げてから取り掛かったかもしれません。
いずれにせよ、その問題集をやる以前に積み上げてきたものが違えば、それにより学習効果は大きく変わります。
現時点での習熟度や本人の理解速度、目指すレベル等々を考慮した上で何を勉強すべきかは決まってくるのです。

サンプル数が小さい

前提が違うからといって、特別その勉強が悪いわけではありません。
ただこれをサンプル数の観点から見てみると参考にはできません。
どういうことかというと、
例えばあるクラスで
A君は国語の点数が50点で数学の点数が80点でした。
対してB君は国語の点数が90点で数学の点数が40点でした。
だから、「国語の点数が低い生徒ほど数学の点数が高い」と言えるでしょうか。
そうはなりませんよね。
少なくとも、そのクラス全員の結果を反映させねばなりません。

A君とB君以外は国語が高いほど数学も高いかもしれませんからね。

つまり、ある人の勉強法が自分にとっても良いかどうかをそれだけで判断するのは誤りであるということです。
サンプル数n=1の情報です。
だから、もし参考にするのであればサンプル数の多い、
すなわち多くの人が実践した結果効果の出ることが比較的多かったものを採用するほうが良いということです。

それでは勝てない!

次に書くことは、向上心がある、成長意欲のある人向けです。
サンプル数の多い成功事例は確かに効果の出ることが多いです。
しかし、それを実行しただけで他人を上回ることはありません。
同じことを実行した人とは差が少ないですし、その方法を生み出した人には決して勝てません。
なぜなら、その人はその方法にたどり着くまでに様々に試行錯誤したからです。
その方法をそのまま真似て実行した人とは経験量が桁違いである、ということです。



模試のやり直し

公開日 2022/07/13

定期テストや模試が終わりましたが、生徒の皆さんはもう復習は済んだでしょうか。
テスト訂正ノートが宿題になっていることも多いと思いますが、今回はテストの復習の時にやるべきだけどほとんどの人がやらないことを書いていきます。

ほとんどの人がやること

・もう一度問題を解く
・解答のポイント、なぜそうなるかを調べて書く

この二つは多くの人が行うと思います。
たまに上しかしていない人もいますが。
生徒の訂正ノートを読むと、大体は問題用紙と自分の解答用紙を貼り、テストの時に解けなかった問題を解き、ポイントをちょっと書き込んで終わりです。
解答の核まで書けていれば一応の及第点ではあります。
しかし、これから書くことを実行すればテストのやり直しをより効果的にし、周囲に差をつけられます。
大学受験を目指すのであれば、それは競争ですのでぜひやっていただきたいです。
特に模試の時には実行してください。
2点挙げますが重要な点は
先につながるやり直し
です。

①類題を解け

定期テストレベルだと、「ほぼ完全に見たことある問題」が多いです。
数学ならば教科書の章末問題、
国語や英語ならば教科書の文章
がそのまま出題されますね。
しかし模試は違います。
全く同じ問題はありません。
(見かけは)初めての問題です。
読んだことのある文章が出てくるわけではありませんよね。
つまり、国語や英語では初見の文章を読んで理解できますか?と問われます。
数学では教科書でやったことを理解した上で、それを応用できますか?ということです。

となると、その模試の問題だけをやり直したところで、
次に活かせるでしょうか?
出題された文章はそのまま入試に出ますか。
見た目が全く同じ数学の問題が出ますか。
違います。
もう二度と同じ問題は出ません。
だからやるべきことがあります。

国語や英語の文章ならば、その文章の内容を理解することは当然として、
・どのような思考過程でその解答に至るのか
・どのような点に注意して読めば論点を理解できるのか
など、似たような他の文章を読む時にも通づるような復習をしましょう。
数学ならば、
・問題の核を捉え、関連する問題を参考書等で解く
ことが有効でしょう。
模試の問題の復習だけだと、その問題にしか対応できない可能性が高いです。

②2回目のやり直し

1回目のやり直しは多くの生徒がします。
では2回目は?
全体の5%もいないのではないでしょうか。
チャンスです。
予言します。
今の高3で、この7月の模試を来年2月時点で80%以上解ける人は高3の10%もいないでしょう。
当たらなかったら大阪屋の焼肉を奢るので許してください。
それだけ、1度やったことを間違いなく再現できるように勉強している人は少数だということです。
逆に言えばそれができれば成績は上がりますし志望校合格は叶います。
だからチャンスです。
1週間後か2週間後か、1ヶ月後でも良いので2回目の解き直しをしてみましょう。



それは本当に効率が良いのか

公開日 2022/06/22

昨今は効率というものが神格化されてきているような気がします。
かく言う私も、何事もいかに早く、上手に事を済ませるかは常に考えていますが、
一見「効率が良さそう」でも実際にはそうでないこともあります。
これを学習の観点から見てみたいと思います。

早く単語を覚えられるか

例えば英単語を早く覚えられる方法はあります。
基本的には思い出す回数を増やしたり、寝る前に勉強したりすればある程度効率よく覚えられます。そういった情報はすでに巷に溢れているので今回は書きません。
実行すれば確かに覚えられるのですが、この実行する側にある視点がしばしば抜け落ちており、それが長期記憶化です。
つまり、学校の単語テストなどの急場凌ぎにはなるのですが、受験対策として、さらには一生物の教養として身につけるには至らないのです。
ではどうするかというと、単語の場合は単語帳で勉強が終わってはいけません。
文章の中で何度も出会ったり、実際に経験してみてそれが少しずつ自分のものになっていきます。
例えば、
biomimetics (バイオミメティクス、生物模倣)という単語がありますが、オナモミからマジックテープ、カワセミから新幹線が生まれたことを知り、それを実際に見てみたり、より詳しく調べてみる、という過程を経ると忘れることの方が難しくなります。

問題の解法を忘れてしまう理由

数学をいくら勉強しても伸びない人は、目の前の問題を解くことだけに集中しています。
例えばテスト前に範囲指定してある問題をひたすら解いていくと思います。
確かに、高校までの定期テストや中学ではそれが通用します。
ほとんど見たことがある問題しか出題されないからです。
要するに上で書いた単語テストの勉強に似ているわけです。
完全にはわかっていなくても、とりあえず答えの出せる手続きを覚えていけばテストでは解答できるので、本人はその勉強したことがわかったつもりになっています。
1、2回解けばできるので、一応「効率」は良いのです。

しかし、これも単語と同じようにすぐ忘れてしまいます。
ではどのような勉強をすべきかというと、基本を理解することです。
わかりやすくするため例題を出します。

$$4^x – 5 \cdot 2^{x+1} – 24 = 0$$

この方程式を解くときに最初苦戦する人が多いのが、指数の処理です。
\(4^x \) を \((2^2)^x = (2^x)^2 \) と変換したり、\(2^{x+1} \)を\(2 \cdot 2^x \) と変換する必要があります。
このとき、この処理をそのまま覚えようとしていてはすぐに忘れてしまうか、または応用が効きません。
\((2^2)^x = (2^x)^2 \) という変形ができるのをしっかり理解するべきです。
例えば、\((2^3)^4=(2^4)^3\) と変形できることを試してみたり、\(\)
そもそも\(2^3=2\cdot2\cdot2\)であるから、
\((2^3)^4=(2^3)\cdot(2^3)\cdot(2^3)\cdot(2^3)=2^{12}\) と計算でき、さらにそれを一般化して
\((a^m)^n=a^{mn}\) が得られます。
指数法則を理解するわけです。

この一見「効率の悪そう」な勉強は、定期テストが終わった後も威力を発揮します。基本を丁寧に勉強しているので、すぐに忘れるようなことはありません。とりあえず問題を解くよりもむしろずっと効率が良いのです。

時間をかけてじっくりと

このような視点が蔑ろにされていないかが私の懸念するところです。
何でもスピード重視、効率重視で進めた結果、皮肉にもその逆の結果が生まれてしまいます。
手間暇をかけてじっくりと育てれば、その果実は大きく実り、土もまた次の世代を育む力を持ちます。手間を惜しむと、その果実は大きいかもしれませんが次の世代は育たないでしょう。
効率よく覚えたものは、効率よく忘れてしまうのです。

模試結果票の見方

公開日 2022/06/08

高総体お疲れ様でした。
塾生から様子や感想を聞きましたが、
まさに青春って感じですね。
多くの高3は引退していよいよ受験一本となります。
切り替えていきましょう。
部活で培った体力と精神力は受験勉強でも役に立ちます。

今回は受験生の基本の一つ、
模試の結果の見方を解説します。

意外と知らない

模試の結果票とはこのようなものです↓

これはベネッセの共通テスト模試です。
他にも駿台や河合塾などの模試や記述式模試を受験しますが今回はこれを例に説明します。

①成績

ここには得点(素点)、平均点、偏差値などがあります。

青い四角で囲ったところに
「5−8文系」とか「国数英文系」と書かれていますが何かわかるでしょうか。
5−8文系は、
5教科8科目、つまり国・数2・英・社2・理2での集計です。
(理系なら5教科7科目)
国数英文系は3教科ですね。
5−8の方は主に国公立大学志望者用です。
国公立大学は共通テストで全科目を課すところが多いのでこれを一つの参考数値にします。

3教科の方は主に私立大学志望者向けです。
私立大学は1〜3教科で受験できるところがほとんどだからです。

偏差値は、
その目的は異なる教科間で自分の位置を測るためのものですが今回は説明を省きます。
こちらの記事をご覧ください。
偏差値の見方
偏差値とは

②成績推移

ここでは過去の同じベネッセの模試結果の推移をみることができます。
左がマーク模試(共通テスト模試)
右が記述模試です。
上の表は得点と偏差値の推移で、下がその得点または偏差値をグラフに表したものです。

これからわかるのは、第一志望校の
前年の合格者との比較です。
折れ線グラフは自分の得点推移と前年合格者の平均点の推移です。
一目で自分がどの程度成績を上げるべきかがわかります。
グレーの帯は前年合格者の学力層です。
つまり、この中に入れるようにしよう、ということです。

③合格可能性

志望校ごとに集計した成績です。
ご存じA〜E判定や志望者内順位、分布を見ることができます。
ライバルがどのような成績を取っているのかがわかるということです。
黒い四角がたくさんありますが横軸が人数で、白い四角になっているところが自分の位置です。
自分より上に山があるなら、それは越えねばならない山です。

アルファベットでの判定ですが、
A・・・合格可能性80%以上
B・・・同60%以上80%未満
C・・・同40%以上60%未満
D・・・同20%以上40%未満
E・・・同20%未満
となっています。

記号でわかりやすいですが、
わかりやすいものには罠が潜んでいることもしばしばです。
Aでも落ちます。場合によってはEでも合格します。
我々はある程度経験があるので、
D判定だが今後伸びが期待できそうな生徒、
逆にB判定だが危ない生徒がわかります。
機械での判定ではなかなかわからないことですね。
鵜呑みにしないようにしましょう。
一番大事なのは、
志望校の過去問で合格点を取れそうかどうか、です。




一通り説明を終えました。
今はスマホ用アプリで模試の成績を見れるようになったので、紙の成績表は見ない人が増えたのではないでしょうか。
アプリの成績表は、情報が少なすぎて(成績表自体が断片的なのに)断片的な情報しか見ることができません。
一度はじっくりと紙の成績表を「読んで」みましょう。
共通テスト対策になりますよ。

数学が苦手な理由

公開日 2022/05/25

数学という科目は最も個人差の出やすい科目です。
ある人は教科書を読むだけで章末の問題が解ければ、
ある人は何度説明を受けてもちょっと問題文が変わるとわからなくなります。
なぜそのようなことがあるのか。
要因は一つではありませんが、大きなものを説明します。

「同じ」とみなす

「同じ」というのは人によって認識に差があります。
例えばこれ。

この二匹のイルカは、「個体」という目線では「違う」個体です。
背びれの形や模様なども違います。
人もそうですね。
しかし目線を上げて「種」として見ると、
バンドウイルカという「同じ」種になります。
さらに
イルカもヒトも、哺乳類という点では「同じ」になります。
これを図にすると下のようになります。

または下のようにも書けます。

このように、どのレベルの目線で見るかによって「同じ」か「違う」かは異なります。
大きな括り(上の図では外側、下の図では上の方)は抽象化を意味します。
ヒトやイルカなどが乳で子を育てるという共通点を抽出し、哺乳類と名づけています。
このように共通点を見出す抽象化が、学習する上で非常に重要な要素になります。

なぜ重要かをもう少し詳しく書きましょう。

高校数学で習う公式の一部を挙げます。

$$y=m(x-a)+b$$

$$y=a(x-p)^2 +q$$

$$(x-a)^2 + (y-b)^2 = r^2$$

数学が得意な人はこれらを「同じ」とみなします。
逆に苦手な人はこれらは関係のない「違う」ものとして捉えます。
この3つの公式の共通点は、平行移動です。
どれも次の説明で片付きます。
すなわち、関数f(x,y)=0 をx軸方向にp、y軸方向にq平行移動すると f(x-p,y-q)=0 となる。
以上です。
解説は書きません。
これが抽象化の例です。
とにかく今伝えたいのは、この1文が分かれば3つの公式を一つ一つ違うものとして捉える必要がなく、大して覚えることがない、ということです。
逆に言うと、
これを理解しないままでいるとそれこそ公式の「丸暗記」に終わり、覚えることが多いと感じ、すぐに忘れてしまうのです。

つまり、数学がいつまでたっても理解できない人はこの抽象化を行っていません。
中学数学からのつながりに気づいていない人も多いと思います。
高校数学には2次関数、三角関数、指数関数などありますが、すべては中学の比例・反比例や1次関数からつながっています。言うなれば、中学からずっと同じことを繰り返しているのです。

抽象化はヒトにしかできない

この抽象化というのは高度な技です。
$$x = 3$$
と書いてxと3は等しい、と言っても、
「xはxであって3とは等しいはずがない」のが普通の感覚です。
動物にはこれが理解できませんし(たぶん)、理解できないヒトがいるのも当然のことです。
ゆえにあまりに理解できない場合は数学から離れて他の得意なことを見つけるのも大事です。