それは本当に効率が良いのか

公開日 2022/06/22

昨今は効率というものが神格化されてきているような気がします。
かく言う私も、何事もいかに早く、上手に事を済ませるかは常に考えていますが、
一見「効率が良さそう」でも実際にはそうでないこともあります。
これを学習の観点から見てみたいと思います。

早く単語を覚えられるか

例えば英単語を早く覚えられる方法はあります。
基本的には思い出す回数を増やしたり、寝る前に勉強したりすればある程度効率よく覚えられます。そういった情報はすでに巷に溢れているので今回は書きません。
実行すれば確かに覚えられるのですが、この実行する側にある視点がしばしば抜け落ちており、それが長期記憶化です。
つまり、学校の単語テストなどの急場凌ぎにはなるのですが、受験対策として、さらには一生物の教養として身につけるには至らないのです。
ではどうするかというと、単語の場合は単語帳で勉強が終わってはいけません。
文章の中で何度も出会ったり、実際に経験してみてそれが少しずつ自分のものになっていきます。
例えば、
biomimetics (バイオミメティクス、生物模倣)という単語がありますが、オナモミからマジックテープ、カワセミから新幹線が生まれたことを知り、それを実際に見てみたり、より詳しく調べてみる、という過程を経ると忘れることの方が難しくなります。

問題の解法を忘れてしまう理由

数学をいくら勉強しても伸びない人は、目の前の問題を解くことだけに集中しています。
例えばテスト前に範囲指定してある問題をひたすら解いていくと思います。
確かに、高校までの定期テストや中学ではそれが通用します。
ほとんど見たことがある問題しか出題されないからです。
要するに上で書いた単語テストの勉強に似ているわけです。
完全にはわかっていなくても、とりあえず答えの出せる手続きを覚えていけばテストでは解答できるので、本人はその勉強したことがわかったつもりになっています。
1、2回解けばできるので、一応「効率」は良いのです。

しかし、これも単語と同じようにすぐ忘れてしまいます。
ではどのような勉強をすべきかというと、基本を理解することです。
わかりやすくするため例題を出します。

$$4^x – 5 \cdot 2^{x+1} – 24 = 0$$

この方程式を解くときに最初苦戦する人が多いのが、指数の処理です。
\(4^x \) を \((2^2)^x = (2^x)^2 \) と変換したり、\(2^{x+1} \)を\(2 \cdot 2^x \) と変換する必要があります。
このとき、この処理をそのまま覚えようとしていてはすぐに忘れてしまうか、または応用が効きません。
\((2^2)^x = (2^x)^2 \) という変形ができるのをしっかり理解するべきです。
例えば、\((2^3)^4=(2^4)^3\) と変形できることを試してみたり、\(\)
そもそも\(2^3=2\cdot2\cdot2\)であるから、
\((2^3)^4=(2^3)\cdot(2^3)\cdot(2^3)\cdot(2^3)=2^{12}\) と計算でき、さらにそれを一般化して
\((a^m)^n=a^{mn}\) が得られます。
指数法則を理解するわけです。

この一見「効率の悪そう」な勉強は、定期テストが終わった後も威力を発揮します。基本を丁寧に勉強しているので、すぐに忘れるようなことはありません。とりあえず問題を解くよりもむしろずっと効率が良いのです。

時間をかけてじっくりと

このような視点が蔑ろにされていないかが私の懸念するところです。
何でもスピード重視、効率重視で進めた結果、皮肉にもその逆の結果が生まれてしまいます。
手間暇をかけてじっくりと育てれば、その果実は大きく実り、土もまた次の世代を育む力を持ちます。手間を惜しむと、その果実は大きいかもしれませんが次の世代は育たないでしょう。
効率よく覚えたものは、効率よく忘れてしまうのです。

数学が苦手な理由

公開日 2022/05/25

数学という科目は最も個人差の出やすい科目です。
ある人は教科書を読むだけで章末の問題が解ければ、
ある人は何度説明を受けてもちょっと問題文が変わるとわからなくなります。
なぜそのようなことがあるのか。
要因は一つではありませんが、大きなものを説明します。

「同じ」とみなす

「同じ」というのは人によって認識に差があります。
例えばこれ。

この二匹のイルカは、「個体」という目線では「違う」個体です。
背びれの形や模様なども違います。
人もそうですね。
しかし目線を上げて「種」として見ると、
バンドウイルカという「同じ」種になります。
さらに
イルカもヒトも、哺乳類という点では「同じ」になります。
これを図にすると下のようになります。

または下のようにも書けます。

このように、どのレベルの目線で見るかによって「同じ」か「違う」かは異なります。
大きな括り(上の図では外側、下の図では上の方)は抽象化を意味します。
ヒトやイルカなどが乳で子を育てるという共通点を抽出し、哺乳類と名づけています。
このように共通点を見出す抽象化が、学習する上で非常に重要な要素になります。

なぜ重要かをもう少し詳しく書きましょう。

高校数学で習う公式の一部を挙げます。

$$y=m(x-a)+b$$

$$y=a(x-p)^2 +q$$

$$(x-a)^2 + (y-b)^2 = r^2$$

数学が得意な人はこれらを「同じ」とみなします。
逆に苦手な人はこれらは関係のない「違う」ものとして捉えます。
この3つの公式の共通点は、平行移動です。
どれも次の説明で片付きます。
すなわち、関数f(x,y)=0 をx軸方向にp、y軸方向にq平行移動すると f(x-p,y-q)=0 となる。
以上です。
解説は書きません。
これが抽象化の例です。
とにかく今伝えたいのは、この1文が分かれば3つの公式を一つ一つ違うものとして捉える必要がなく、大して覚えることがない、ということです。
逆に言うと、
これを理解しないままでいるとそれこそ公式の「丸暗記」に終わり、覚えることが多いと感じ、すぐに忘れてしまうのです。

つまり、数学がいつまでたっても理解できない人はこの抽象化を行っていません。
中学数学からのつながりに気づいていない人も多いと思います。
高校数学には2次関数、三角関数、指数関数などありますが、すべては中学の比例・反比例や1次関数からつながっています。言うなれば、中学からずっと同じことを繰り返しているのです。

抽象化はヒトにしかできない

この抽象化というのは高度な技です。
$$x = 3$$
と書いてxと3は等しい、と言っても、
「xはxであって3とは等しいはずがない」のが普通の感覚です。
動物にはこれが理解できませんし(たぶん)、理解できないヒトがいるのも当然のことです。
ゆえにあまりに理解できない場合は数学から離れて他の得意なことを見つけるのも大事です。

その教材の使い方あってる?

公開日 2022/05/18

学生の皆さんは毎日何かしらの教材を使っていますが、
それがどのような目的の教材なのかを理解しているでしょうか。
次のような質問に答えられるでしょうか。

✅その教材から得られるものは何か。
✅どのような難易度の教材なのか。
✅その教材を使う時期は?

これらを把握せずに使い続けると、
効果は半減、いやそれ以下でしょう。
その時間がもったいないです。
今日は教材の種類とその使用法についての解説です。

3種類

教材は大きく分けて以下の3種類存在します。

①解説書
②演習書
③過去問

それぞれについて解説します。

①解説書

つまり教科書のようなものです。
例えば、

このような公式事典や文法書、教科書の内容をより噛み砕いて説明されるものです。
使用目的は、ずばりインプットです。
・全体像の把握
・学習内容の理解を深める
・問題集の解説では不十分なところを補う
というふうに使います。

特徴としては、市販のものは教科書よりもわかりやすい編集であったり、口語調で書かれていたりするので読む人によっては教科書より使いやすい点があります。
また、入試を意識したより深い内容まで解説されるものもあります。

②演習書

言い換えると問題集です。

使用目的はずばり、アウトプットです。
解説書で学んだことを実際に使ってみるということです。
・学んだことの理解度チェック
・知識の活用の仕方を学ぶ
・多くの問題に触れて、慣れておく
といった使い方をします。

特徴は、問題量が豊富であることと、解説は簡素なものが多いです。

③過去問

入試や資格試験の過去問です。

使用目的は、過去問の研究・演習です。
・どのような難易度の問題が出題されるのかを知る
・傾向を知る
・問題形式に慣れる
などの目的で使います。

特徴は演習書に似ており、解説は簡素です。
3〜15年分、中には50年分の問題が掲載されているものもあります。

NG行動

それぞれの特徴、使用目的がわかったことで、
するべきでない使い方も見えてきます。
学生が陥りがちなNG行動の例を挙げます。

レベルの合わない教材を使う

受験生にありがちです。
自分の習熟度に合ったものを使わないと非常に勉強効率が悪いです。
例えば、
ほぼ全て知らない単語が載っている単語帳で単語を覚えようとする。
受験勉強開始時にいきなり過去問演習をし始める。
など。
目安として、半分くらいはすでにわかるものを使った方が良いです。
演習書で自分のレベルを把握しましょう。
自分ではわかっているつもりでも、実はそうではないことは多々あります。

演習書ばかり使う

問題を解くばかりの人、いないでしょうか。
たくさん解くことは大事です。
しかし、そればかりでは考える力は伸びません。
特にこれは、抽象的な思考が重要な数学で差がつきます。
解説をしっかり読み込んでいるでしょうか。
また、演習書の解説では不十分な点を解説書で補っているでしょうか。
問題集だけでは、どうしても断片的な解説にとどまります。
ですから深い学習ができておらず、いわゆる応用問題に手も足も出なくなります。
問題集で解いた問題そのままの問題しか解けない、ということです。
学校で配られる教材は、ある理由で解説が雑なものが多く、つまり学校の先生の授業での解説を前提として作られているので独学には向きません。


道具には使い道がある

世の中の道具にはたいてい、「使い道」があります。
何か目的があって、それに達する手段です。
想定されたもの以外の使い道をすることもできますが、受験の世界では不要です。
目の前に定規があるのに、わざわざノートを使って直線を引きませんね。
目的をはっきりさせ、それに適う道具を使うことが大事です。
決まったことを決まったようにやらないといけないのに、
「思考力」を育てようとする矛盾も起こっているわけですが。

抑えると、反発する

公開日 2022/05/11

作用・反作用の法則

今あなたはスマホの画面を触っている、もしくはパソコンのキーボードやマウスを触っていると思います。
「触れている」感覚があると思います。
なぜかというと、
あなたが指で画面を押していて、同時に画面から押されているからです。
壁ドンをすると手が痛いですが、
なぜかというと壁もまたあなたを叩いているからです。

このように、
物体に力を加えると、反対向きで同じ大きさの力を受けることを
作用・反作用の法則といいます。

上の図で矢印は力の向きと大きさを表しています。
同じ色の矢印は、それぞれ作用・反作用の関係にある力を示しています。

青:人が壁を押す力、壁が人を押す力
緑:人が地球に引かれる力、地球が人に引かれる力(万有引力)
黄:人が床を押す力、床が人を押す力
赤:摩擦力

壁ドンするときにはしっかり足を踏ん張りましょう。(赤の力)
そうしなければ、自分が壁を押した瞬間、壁から押されて後ろに退いてしまいます。
くれぐれも氷の上で壁ドンをしないように注意しましょう。

我々はこのように、
押すと同じ力で押し返されるという法則の下で生活しています。

どこにでもある

作用・反作用の法則というのは、
物理的なものに限らず、様々な事物に当てはまるのではないでしょうか。
例えば、
やるな、と言われたらしたくなりますよね。
あの場所には行くなと言われたら
何があるのだろう、と興味を持って行きたくなりますよね。
行くなというくらいだから、面白いものか何かあるに違いないと。

部屋の片付けをしなさい。
宿題をしなさい。
家事を手伝いなさい。
と言われるとやる気が失せますね。
反作用がはたらいているのです。
仕事を始めると、国や自治体から
税金払いなさい、と言われます。
ええっ、こんなに払いたくないです。
これも反作用ってことです。
(私はきちんと払っています。)

精神的作用・反作用の法則、と言えるかもしれません。
抑えようとすれば反発する。
自然界では当然起こりうる事象です。

自習時間ランキング

公開日 2022/04/27

毎週高3生の自習時間ランキングを掲載しています。

先週、部活生の1位は20時間、非部活生の1位は33時間でした。
6日間の合計なので、1日あたり3〜5時間程度ですね。
部活生は高総体前ですがよくやっていると思います。
今の頑張りは部活引退後の伸びにつながります。

このように短いスパンで記録していくと、
自分の時間の使い方が見えてきます。

来年の共通テストまであと37週間ですが、
例えば週にたった1時間の勉強時間の差しかなくても、
入試までには37時間の差がつきます。

37時間あれば何ができるか。
12問収録の英語長文の教材が1冊、余裕を持って取り組めます。
1問15分で数学の問題に取り組めば、
148問になります。

このような教材1冊ができちゃいます。
1日1時間の差もあれば、入試までに260時間の差です。
その重みが理解していただけるのではないでしょうか。

時間の使い方

これは受験生の永遠のテーマです。
どのようにして時間の捻出するか考えてみましょう。

何をしようか、とその場で考えない

やるべきことが多い時は、計画が重要です。
今週何に取り組むか、今日何に取り組むか。
さらに、どの時間にそれをやるか。
そこまで自分で決めていれば、迷いがなくなり、
結果として使う時間が増えます。
週に一度、まとめて計画してしまいましょう。
そのために高3生には手帳を使ってもらっています。
生かすも殺すも、あなた次第。

細かい時間をどう使う?

例えば登校直後とか、休み時間とか、通学の電車やバスの中とか。
そのような隙間時間をどう使うか・・・

ということよりも大事なことがあります。
学校の授業時間です。

細かいことを考えるよりも、
大きな時間を占める授業時間の使い方を改める方が有意義です。
家賃の高い家に住んで、細々とした生活費を削ると貧乏になります。
5分とか10分とか、そのような時間の使い方よりも先に考えるべきことがあります。

授業を「受けるだけ」になっていないでしょうか。
最近は学校の先生方も様々に工夫されていると聞きますが、
生徒の側も授業への取り組み方は考える必要があります。
授業は「参加」しましょう。

例えば、予習というのはそのためにします。
予習すれば、課題が生まれます。
なぜこれはこのように計算するのだろう?
というように。
それぞれが課題をもって授業に臨むことで、つまり問題意識を持って参加することで、自分が何に注意していればよいかがわかります。
自分の中の問題を解決する場にすれば良いです。

逆にこれなしに、まるで垂れ流しているテレビ番組を見ているかのように授業を聞いていては
時間だけが過ぎていきます。
それで勉強時間が足りないと嘆くのは滑稽なことです。

私立大学はお金がかかる?

公開日 2022/04/13

一般的に私立大学は学費が高いと言われますが、
国公立大学と比べて、実際どれくらい高いのか?

例えば親子で進路の話をする時、金銭的な話も挙がると思いますが、
「高い」、「低い」で終わってないでしょうか。
それだけで片付けてしまっては、話は先に進みません。
「やった」「やってない」の応酬、水かけ論と変わりません。

具体的にどれほどの差があるのか。
調べてみましょう。

入学金・授業料

令和3年度(2021年度)の統計(平均値)です。

入学金(a)授業料(b)計(a+b*4)
国立大学282,000535,8002,425,200
私立大学245,951930,9433,969,723

入学金と4年分の授業料の合計は、約240万円と約400万円で、その差は約150万円でした。
またこれとは別に初年度納付金、私立大学だと施設設備費などという名目で費用がかかります。

私立大学の具体例を見てみましょう。

福岡大学 経済学部の場合

入学金(a)授業料(b)教育充実費(c)合計(a+b*4+c*4)
190,000730,000180,0003,830,000

福岡大学 薬学部の場合

入学金(a)授業料(b)教育充実費(c)合計(a+b*4+c*4)
400,0001,350,000290,0006,960,000

その他アルバム代など細かいものは省いています。
近場も調べてみました。

長崎純心大学 人文学部の場合

入学金(a)授業料(b)教育充実費(c)合計(a+b*4+c*4)
240,000700,000240,0004,000,000
※授業料・教育充実費は4年間の平均

注意すべきなのは、
私立大学は学部によって大きく異なる点です。
理系の特に医歯薬学部は他より高くなります。

この差をどう考えるか

上の例のように、
医・歯・薬学部は国公立大と私立大で大きく差が出ます。
国公立大の方が圧倒的に得です。

それ以外、特に文系学部の方はどうかというと、
上の例では150万円ほどの差でしたね。
これをどう捉えるか。

給付型奨学金

例えば、日本学生支援機構の給付奨学金。
給付なので返す必要はありません。
世帯収入の条件を満たし、学業に問題がないならば受けられます。
入学金、授業料の減免や毎月の給付を受け取れます。
私立大学・自宅通学ならば月4万円ほどのようです。
日本学生支援機構の給付奨学金

大学ごとにも様々な制度があります。
例えば、東京都の上智大学を見てみます。
上智大学奨学金案内
そのうちの「上智大学修学奨励奨学金」は
家庭の収入と本人の学業成績が良好であることが条件ですが、
授業料の全額、半額、または3分の1が給付されるとあります。
経済学部だと授業料は年額78万円、4年で312万円なので、
半額給付で156万円となります。
これで国公立大との差があまりなくなります。

将来の期待できる年収

もちろん進む大学ですべて決まってしまうわけではありませんが、
大学の難易度や実力と卒業生の収入に相関関係があることは事実です。
都会であるほど平均収入は上がります。
経済規模、企業規模などの影響でしょうが、やはり都会の大学卒業者の方が収入は多い傾向があります。

簡単な例を出します。
地方の国公立大を卒業し、年収が400万円だったとします。
一方で東京の私立大学を卒業し、年収が450万円の人がいたとします。
上で挙げたように、大学4年間での支出の差が150万円だったら、
その差はたった3年間でなくなり、逆転が起こります。

以上のように、
金銭的問題の解決策は存在します。
これだけでなく、貸与型の奨学金でも良いし、ある程度の差額はアルバイトでまかなう、ということもできると思います。
こういうのは、感情は横に置いておき数値で議論する必要があります。
色々な制度がありますから、すぐに諦めずに親子でよく調べ話し合いましょう。
最良の選択ができると良いですね。

たのしいとラクの勘違い

公開日 2022/03/30

先日授業中にある中学生から聞いた話です。
〇〇高校のA先輩が、英語の勉強が楽しそうだからその高校を選んで入ったが、実際は難しくて全然楽しくなかった、という主旨の話をしたそうです。
まあまあ耳にする類の話です。

どうしてそんなことになったのか。
考えてみましょう。

楽しい勉強?

英語を楽しく勉強するというと、どのようなことを想像するでしょうか。
例えば好きな洋楽を聞いたり、ドラマを見たり、ネイティブと話すことでしょうか。
各々の好きなことを使って勉強すれば楽しいかもしれません。

しかしそれは学校ですることでしょうか?
学校に来ている生徒全員、A先輩の好きなことを同じように好きでしょうか。
もしそうであるならば、
学校の先生はそれに合わせて授業をすれば生徒全員の成績はよくなるかもしれませんが、
そんなことはあるでしょうか。

すなわち、生徒全員が楽しいと思える勉強の仕方など存在しないし、
それを学校に求めることは見当はずれです。
楽しく勉強したいならば、
自分で動くべきでしょう。

目的意識

A先輩はなぜ英語を勉強したいを思ったのでしょうか。
よくある希望は、「英語で話せるようになりたい」ですね。
動機は何だって良いし、些細なもので構わないと思いますが、
おそらくそのような漠然とした動機では勉強は続かないでしょう。

学校で授業を受けるだけで話せるようにはなりませんね。
50分授業が週5回あったとして250分。
1週間は10,080分です。
そのうち3分の2起きていたとして6720分。
6720分のうち250分しか英語を使っていないのに話せるようにならないでしょう。
もし本当に話せるようになりたいのなら、
単身で英語しか使えない環境に飛び込むのが一番だと思います。
話せないと生きていけない。
そんな状態ならあっという間に覚えます。
(私がやったことがあるわけではありませんが)

楽なものの価値は低い

ここで「楽である」とは、「苦労のない、力を必要としないこと」と定義します。
A先輩は楽しく勉強することと、楽に身につけることを勘違いしているかもしれません。
楽をして勉強していても、身につくものはわずかで大した価値はありません。
楽をしていても身につくということは、どんな人でもできることだからです。

英語を話せるようになりたいならそれしか使えない環境に飛び込めと書きましたが、
それって楽でしょうか。
多分、最初はものすごくしんどいと思います。
帰りたくなると思います。
しかし人というのは適応力がありますから、必要なことはどんどん覚えていきます。
そして、だんだんと楽になっていくと思います。

価値のあることを身につけたいならば、
辛いこともあるということは覚悟しなければなりません。

文章を愉しもう

公開日 2022/03/09

暖かくなってきましたね。
春といえばアスパラガスが食べたくなります。
ベーコンで巻いたり、揚げてマヨネーズにつけるのが好きです。
ほとんど外食ですが。

花粉症が煩わしい季節でもあります。
アレルゲン免疫療法というのがありますが、週1、2回の通院を2、3年続ける必要があるようです。
自分は薬を飲めば症状がかなり軽くなること、そして治療にかかる時間と薬を買って飲む時間を計算などしたところ、通院するメリットがなかったので薬を飲んでいます。
手間のかからない治療法がもしできれば受けたいです。


さて今回は文章を読むという話です。

国語や英語では、
文章を読んでそれについて答える問題がありますね。

「棒線部①はどういうことか。」
「この文章の内容と一致するものを一つ選べ。」

などという設問があります。
このような問題に対して、見ただけで花粉症ならぬ文章症になってしまう生徒もいると思います。
なぜ発症してしまうのか。
その理由の一つは、

問題を解くことばかりに集中しているからです。

小学生の頃から、
文章を読んでは問題を解き、丸かバツがつけられます。
バツばかりつけられたらどうなるか。
それは嫌いになっても仕方ありませんね。

このようなことが重なった結果、
文章は、それに対して問題を解き、評価されるもの
というレッテルを貼ってしまうことになります。

読めたら面白い

そんなふうになって欲しいと思います。
世の中には素晴らしい文章がたくさんあります。
国語や英語の教科書に載っているものもそうです。
問題集や入試問題で扱われる文章もそうです。
面白いこと、ためになること、心を揺さぶられるものがたくさんあります。
色々な考え方を知ることができます。
先の生き方を決定づけるような文章に出会うこともあるかもしれません。

例えば最近は、
高校生の授業でテレワークについて書かれた英語の文章を読みました。
主にメリットについて書かれた300語程度の短い文章ですが、
それでもよく読めば、テレワークをする自分を想像してみたり、デメリットを考えるなどして将来の自分の働き方を考えるきっかけになることでしょう。またそこから、働くことそのものに興味を持ち、働くとは一体何なのかを考えるかもしれません。
個人によって何に興味を持つかは異なりますが、
いずれにせよ、そんな短い文章からも得られるものはとても多いです。

ただただ設問を解くだけなのは、もったいないです。

英語がわからないのなら、日本語訳を読めばよいのです。
わからない単語があれば、手元の端末で検索すればよいのです。
とにかく、一旦解くことから離れて、
じっくりと読んでみましょう。
一度でわからないこともあります。
それなら時間をおいて何度か読んでみればよいです。
そういうことだったのか!
と感動を覚えることでしょう。
本来文章というのはそういうものです。
そして読むことを楽しめるならば、
なぜか問題も解けちゃうわけです。

いつまで入っているの

公開日 2022/1/5

明けましておめでとうございます。
タナカ塾では元旦から大学受験生の最後の追い込みを行っています。
高校受験生も、いつもより長い講習時間ですがよく頑張っています。
お正月の雰囲気を楽しみつつ、鍛錬してもらいたいと思います。

やることがあるのにここ数日ダラダラテレビを見たりネットサーフィンをしてしまった人もいるようですので、やや怖くなる話をします。

トイレに

どのくらいの時間入っていますか。
新年早々こんな話から始まってすみません。
冬休みに毎日やることを決めていたにもかかわらず、ほとんどやらずじまいだった生徒と話していたものです。
少し前にネット記事で見たのですが、
何かの調査で(忘れました)トイレでの平均滞在時間が1分長くなったことがわかったそうです。
主な原因はスマホで、トイレに入って長時間スマホをいじっている人が多いようです。中には30分とか1時間とか。

そこで、
人生でどれくらいの時間をトイレに費やすのかを計算してみました。
1日5回トイレに行くとします。
1回あたりの滞在時間が1分多くなると、
1日で5分増えることになります。
1日は24×60=1440分ですので、1440分の5だけ滞在時間が増えるということです。
では人生80年として、どれくらい増えるかというと・・・

$$ 80 \times \frac{5}{1440} \times 365 = 101.4 $$

100日間、トイレに入っている時間が増えることになります。
想像してみてください。
その100日間で何ができるのか。
トイレがお気に入りであれば止めませんが、それで良いのでしょうか。
この計算をしてから私はスマホを持ち込むのをやめました。

何に時間を使うのか

トイレの話は一つの例で、
どのように時間を使うかは一度考えてみることを勧めます。
いつかは死ぬし、今この瞬間より若い時は2度と来ないからです。
おそらく関わりがないか、あっても希薄な関係のSNS上の人の投稿を見続けていいのか。
芸能人の不倫騒動とか、素人でもわかるようなことしか言わないコメンテーターが出る番組などどうでも良いテレビを見る時間に費やしていいのか。
もちろんSNSが悪いとかTVが悪いとか言っているわけではありません。
ある人にとって有益なことはそれぞれだからです。
ただ、後悔のないようにしてもらいたいと思うだけです。
自分への戒めでもあるわけです。

タイトルを読みなさい

公開日 2021/12/22

年末ですね。
慌ただしさを感じます。
特にこの時期は心が不安定になっている人が増えます。
運転が荒い車も多いですね。
そういう雰囲気に流されないよう、余裕を持って過ごしたいです。

最近読んでいるおすすめの本です。
「忙しい」と言ってしまう人はぜひ。
『一汁一菜でよいという提案』 土井善晴



今日は題名を読めという話です。
参考書や問題集を購入したら、まず何をするでしょうか。
指導をしていて気づくのが、
使っている本の名前を覚えていない生徒がかなり多いということです。
信じられない方もいると思いますが本当です。
本の表紙などをほとんど見ていません。

タイトルを知らないのは

その本を読んでないも同然です。
別に、サブタイトルまで一語一句全て暗記せよ、
というわけではありません。
しかしタイトルがわからないというのは、
どんなテーマの本かわかっていないということ。
参考書ならば、
それでどんな勉強をしているのかがわかっていないということです。

目次も重要

同様に目次のページも見ない人が多いです。
目次は全体を見るのに使います。
その本の展望です。
これは地図に似ています。
どこに行けば、自分の知りたいことが書かれているかが分かりますね。

全体が見えなければ、計画を立てることができません。
計画が立てられなければ、受験などに間に合いません。

タイトルと目次は、抽象と具体

共通した性質を取り出してまとめたものを抽象と言います。
例えば下の画像のように。

木になって果実をつけるもの、という共通項を取り出して、
「果物」という抽象表現ができます。
これを英文法の参考書にしてみれば下のようになります。

「英文法」という名のタイトルで、
目次に「文型」とか「関係代名詞」とか書かれているわけですね。
このような抽象と具体の整理ができてくると、
勉強が捗っていきます。
だから大事ということです。

タイトルは重要とは言っても、
中にはただただタップ、クリックしてもらうためだけの煽りタイトルもあります。
ネット上の広告やYouTubeなどですね。